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第143話 温泉旅館
女将は以前から陸に岡惚れしている。陸がゲイなのを知って諦めた経緯がある。
「若が女を相手にしないから我慢しているのよ。
いつもいい男ばかり連れて来る。
でも、今日は若すぎるわね。」
部屋付きの仲居と話している。ヤキモチ妬きな女将はいつもこの年配の仲居しか付けない。
「ごゆっくりどうぞ。」
「ふうーっ、やっと二人になれたな。」
早速キスして来た。太郎は腰が抜けそうだ。
ずっと期待していたから。
「いきなり旅館でよかったかな?
どこか観光してからが、いいのかと思ったんだが。」
「ううん、俺も陸と二人になりたかった。」
首に抱きついて立ったままキスをした。
崩れ落ちそうな太郎を抱き抱えてソファに座る。
いきなり激しいキスに蕩けそうだ。
これまで、いろいろな妄想をしていた。
太郎は今夜,陸に抱かれる覚悟をしていた。
「俺、研究して来たんだ。」
「なに?」
真っ赤になった太郎が抱きついて来る。
「温泉に入ろう。
せっかく掛け流しだって言うから。」
陸がスーツを脱いだ。上着を受け取ってハンガーにかける。
シャツとネクタイの陸が大人のムードで素敵だ。その胸に抱きついた。
「ずっと会いたかった。
いつも一瞬だけしか会えなかったから。」
「俺も会いたかったよ。太郎を抱きたかった。」
いつもと変わりないパーカーとジーパンで来た太郎が可愛い。15才の青臭さを放つ。
頬を撫でてくちづけする。
可愛らしく口を開けて舌を絡ませる。
「うーん、待って。息が出来ない。」
「膝においで。」
「陸の匂い。ずっとこうしていたい。」
陸は笑って、我慢できそうにないな、と言った。
カチャカチャとベルトを外す音。ズボンを受け取って丁寧にかける。
乱暴にパーカーを脱いでジーパンを蹴り捨てた。ネクタイをほどく時間も惜しいようにくちづけが離れない。
Tシャツの太郎の身体が意外と逞しくて驚く。
陸がシャツを脱ぎ捨ててあのマリア観音が見えた。唇を離して陸の背中に見惚れる。
「すごいね、綺麗だ。」
「年取ったらしわくちゃになるんだぞ。」
この前、稔の所で見た、老極道の紋紋を思い出した。
「それでも素敵だよ。」
(そんな年まで一緒にいられたら、どんなに幸せだろう。)
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