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第146話 消える関係者

「ハナでーす。 ご指名ありがとうございます。 お客さんウチ初めて?」 「いやぁ、アンタがハナさんか? ちょっと聞きたいことがあるんだよ。」  とっさにハナの顔色が変わったのを、吉田は見逃さなかった。 「何も知らないよ。」 「まだ、何も聞いてない。 あんた、高瀬医師を知ってるだろ? かかりつけじゃないのか?」  ハナというホステスはかなり年を食っている。 持病があるらしい。  なぜか訪問診療の高瀬医師にかかっていた。 その高瀬医師が消えたのだ。  吉田は、やっと高瀬医師に辿り着いたところだった。それがこの所、連絡が取れなくなっていた。見つけた糸が切れてしまった。 「高瀬先生にかかってるんだろ。 定期的に薬を処方してもらってるんだよな。 高瀬先生に連絡したいんだよ。  教えてくれ。」 「あたしゃ何も知らないよ。」 (いや、こいつは何か知ってるな。) 「ドリーム事件って覚えてるか?」 「いやだよ、何も知らないよ。」  ハナはもうしばらく前から重症の糖尿病だった。インスリンの注射を一日4回。欠かせない。 飲み薬も7種類、処方されている。  投薬をやめられないのでかかりつけ医から離れられない。なぜか長い付き合いになった高瀬医師には身の上話をしていた。   夫が確定死刑囚で収監されている事を。 ある日、生活保護を受けたアパートで倒れている所を救急車で運ばれた。低血糖による昏睡だった。もともといい加減な性格できちんと薬を飲まない、飲み忘れてまとめて飲む、など自己判断でやっていた。  注射も忘れることが多く、ある日、忘れた分をまとめて注射して昏睡に陥った。  生保で医療費はかからない。入院だった。 高瀬医師にはこっぴどくお説教をされた。 ハナはどん底の暮らしで、たまたま知り合いの、場末の安キャバレーに出ていた。 「なんだ、ババァかよ。 チェンジチェンジ!」 客を怒らせる。店からも厄介者扱いされていた。  それでも、寂しくて夜の街に出て来る。 「人から聞いたんだよ。 あんた高瀬先生にかかってるんだろ。 薬が切れたらどうするんだよ。 高瀬先生に連絡取れるんだろ。」  吉田は食い下がった。 なぜか、吉田が探し始めたら,高瀬先生と連絡取れなくなったのだ。  訪問診療も滞っていると言う。 患者が困っているらしい。登録医師会から捜索願が出されていた。

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