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第147話 執行

 吉田は独自に調べを進めていた。 近づいては遠ざかる。手掛かりはすぐに切れる細い糸だった。以前紹介された高瀬医師にもっと聞いておけば良かった、と後悔した。  高瀬医師は失踪したのか?連絡が取れない。  ハナは55才だが見た目は70才を超えて見えた。相当荒んだ人生を送って来たらしい。  荒れた生活が顔に刻まれている。 若い頃はまあまあの美人で浮名を流していた。  今は嫌なシワの刻まれた醜い顔になっている。  たまに秋吉が店に来る。ハナを憐れんで,様子を見に来る。裏で何かを見張っているようだ。  ハナが何を知っているというのか。  吉田は秋吉も捕まえて話を聞きたいと思っでいた。もう、かなりいい年だろう。  度々C国に出国している。  その日、吉田は朝刊で死刑執行の記事を見た。 陸の父親の死刑が執行されたのだった。   長い事、掃除屋と言われて堂島孝平に使われていた。殺し屋竜、と異名を取る。その掃除した人間の数は驚愕に値する。  しかし現行犯で逮捕されたのは我が子の件だった。助け出された陸と殺された妹のハナ。  母親が顎を蹴って骨折した状態で死んでいた。 そばに餓死寸前の兄、4才の陸がいた。  父親の竜は、上告も却下され確定死刑囚となっていた。母親の里菜は、18年にも及ぶ懲役を済ませて放免となっている。  今では、安藤甲斐の養子となっている陸に、死刑囚、今関竜本人が身許引受の手続きをしていた。  最後に迷惑をかけてすまん、と事前に手紙が来た。巡り巡ってただ一人の血を分けた息子に、遺体引き取りを頼む、筋違いの父親だった。  陸にはその日の早いうちに連絡があり、火葬は陸の仕事となった。  陸は遺体を引き取りに行った。火葬もせずに遺体は返された。  吉田の元上司、現役の漆山本部長から、話を聞いた。 「普通の縊死と違って刑死体は酷いもんだそうだ。実の息子に引き取らせるとは、な。 最後まで虐待親だな。」 「安藤陸も立派な極道。引き取る時、まゆひとつ 動かさなかったそうです。」 「陸、大丈夫か?」 「ああ、遺体は火葬にして海に散骨するよ。 甲斐とハナの眠る墓には入れてやらねえ。  何で思い出したように俺に後始末させるんだ。」 (母親は、里菜は、どこかで野垂れ死んでくれ。 俺になんか連絡してくれるな!)

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