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第148話 へその緒
高瀬医師の溺死体が川から上がった。北関東の小さい河川だった。
遺体からは大量の酒が検出された。自殺か?
「酔っ払って川に落ちたんだろう。」
河川敷のベンチに飲酒の痕跡があった。一人で飲んでいたようだ。
「なんて事だ!死人に口なし、か?」
数日後、吉田に手紙が届いた。中は便箋とT駅のコインロッカーの鍵だった。
早速ロッカーを開けると小さな箱があった。
ーードリーム事件で取り上げた新生児の臍帯です。全員分ではないですが、自分が取り上げた子供の分です。いずれ、本人に渡そうと保管していました。ーー
「これをDNA鑑定すれば。」
「何と鑑定するんだよ。親がわかればいいけど。」
「当たりをつけて?」
「また、厄介な事だ。」
陸は港の李星輝に連絡した。
「ああ、あの遺体は保管してあるよ。
港のデカい冷凍倉庫だ。」
海浜病院の大介先生に頼んで臍帯とのDNA鑑定を依頼した。
コンテナの遺体は5才くらいだった。5年前の臍帯のDNAとひとつでも、同じものがあったら立件出来る。
吉田にも話した。
「荼毘に付されずに残っていたなんて奇跡だな。」
李星輝が、
「党員に処分される前に隠したんだ。
全部じゃないけどね。」
「見つかったら、本国で逮捕、死刑だな。
高瀬医師の覚え書きが残っていて臍帯の親は特定できるようだ。親が名乗りたくない場合は断れるらしい。そもそも親にたどりつけるのか?個人情報だ。
吉田が、陸に
「陸の母親に会ったよ。」
「俺は会いたくないね。
ハナを源氏名に使って、恥知らずにも程がある。
俺は死んでも許せないだろう。」
「ああ,わかったよ。母親の事は話題にしないよ。」
事件が動いた。また、児童ポルノの動きがあったという。
また、闇オークションが開かれているらしい。
「今度はどこで?」
「誘拐も増えてるって。」
多分秋吉だ。
「使える子供は使う。
使い古しは,別の用途がある。」
相変わらずほくそ笑んでいる。
「私は人間の苦しむ顔が好きなんだ。
人間の苦しむ顔は、すごく美しいんだ。
おまえの苦しむ顔を固定してやろう。」
???
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