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第153話 大日本倭塾

 陸は店を、本日休業、にした。 スタッフの中の倭塾の塾生を集めて事情を話した。 「人身売買の話だ。かなり危険な相手だ。 吉田が警察に経緯を話している。」  これからあの別荘に行くことを告げる。 酷い事になっている。前回オークションに手入れが入って、大物客がたくさん逮捕されたが、それを企んだ組織が捕まらない。見つかるのは枝葉の小物ばかりだ。  大規模な人身売買の組織が裏に存在している。 孝平伯父貴の時のようには行かない。伯父貴はいいように利用されただけだった。伯父貴の名義のフロント企業が摘発され潰された事で、終わった。 「ヤクザも舐められたもんだな。 枝とはいえ登龍会だ。会長は黙っているが。」  陸は藤尾さんの事を思った。 敵は巨大だ。奴らの常套手段は、闇から闇へ葬る事。失踪に見せかけて消される。 「正面突破は、うまく行かない。逃げられてしまう。作戦を練って。奇襲はヤバイ。 どうしたらいい?」 「奇襲って、子供がいるんですよね。 危険です。怪我人が出る。死人か?」 「作戦を立てよう。 明日の朝までに助け出したい。」  隣国が絡んでるとしたら、敵は武装してますね。奴らの得意のアサルトライフルか?」 「AK47ですか?」 「ああ、普及している。」 「亡くなった若松さんと虎ニさんの敵です。 陸さんに命預けます。」 「いやぁ、そう簡単に死んでくれるな。 新宿抗争の時は俺も死にかかったが、こうして生きてる。みんなも生きろ!」  作戦はこうだった。単純だ。 「周りを包囲して内部に入り込んだら、 まず子供を確保する。殺し合いはそれからだ。  警察が間に合えば任せる。 俺たちは手を出さない。子供と自分の命を守れ。 一人の死者も出すな。」  陸の檄が飛ぶ。  流星が盃を回した。水杯だ。死を覚悟して二度と会えない、という事だ。  陸は太郎に会いたいと思った。 (ダメだ。弱くなってる。) 流星が手を握る。 「俺の屍を拾ってくれよ、流星。」  熱いくちづけを交わした。 (俺はいつも悲壮感を漂わせてセンチメンタルになりがちだ。なにが極道だ。女々しいな。) 「かしら、全てが終わったら、街宣車でお迎えに上がりますよ。」  李星輝が駆け付けた。彼も赤ドラゴンという組織を背負っている。 「梁大人から、行って来い、って言われたよ。 日本の華僑を守るためにも。この頃の故国は目に余る。陸を応援するって。」 「ありがたいな。梁大人。」

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