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第158話 遅い警察
子供を助け出すのが一番最初だ。次に買春客を捕まえる。出来れば首謀者を確保したい。
ドアを蹴り破って但馬の部屋を見つけた、と思ったら屈強な男に捕まった。
「さっきからうるさいと思ったら、ヤクザが来たの?」
「なんでヤクザだとわかるんだよ。」
ちょっと陸は傷ついた。
「どこから見ても極道顔をしてるじゃない。
芸能界に長くいるとわかるのよ。」
「こいつ、オカマか?キモいな。」
ボディガードの男がグイグイ締め付けて来る。
喉が苦しい。酸素が足りなくなってきた。
(堕ちる!)
と思った瞬間、後ろから撃った音がした。
自動拳銃の軽い音。続けて撃ちまくる。
装填した弾数が多く撃ち続けられる。
跳弾に当たらないように避けるのが精一杯だ。
「撃ち過ぎだ、吉田ぁ!」
「悪い悪い、面白くなっちゃってな。」
倒れている重たくてデカいボディガードの体をどかしながら、吉田を見た。
吉田。陸が空手で唯一負けた男。
こそこそと逃げようとする但馬を後ろ回し蹴りで倒す。
「他の部屋はどうだ?」
「子供と客は確保したが、一番の犯人は見つからない。」
雑用をさせられているスタッフらしき人間たちが多い。チンピラ然とした日本人だ。
党員らしき男が組みついてきた。陸は情け容赦なく拳で殴る。顔面から血飛沫をあげて倒れる男。
「鼻血だよ。死にやしねえ。」
自分の血を見て戦意消失している。他の奴も気分よく殴り倒した。
タケルたちも党員らしき人民服の男を捕まえている。みんな腫れ上がった顔と鼻血で酷い顔で連れてこられた。
「子供たちは全員無事か?」
警察が到着した。スタッフも一人残らず警官が捕まえた。事情を聞くためだ。
「俺たちアルバイトできたんです。
こんな事になるなら来なかったのに。
もう帰っていいですか?」
「だめだよ、これから事情聴取だ。」
「ネットのブラックバイトで見つけたんだ。
まともな仕事って言うから。」
「おまえ、時給いくらって聞いた?」
「一万だって。」
「時給一万のバイトがまともな訳あるかよ。」
警官は呆れていた。
所轄で厳しく説教されてバイト君は帰った。
その中に少し年配の男がいるのを警官は見逃さなかった。
「もう少しお話し伺ってもよろしいですか。」
「いや、私は持病があるのでこれで。」
「おまえ、秋吉だな。指名手配されてるよ。」
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