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第160話 値段⁈

 事務所でニュースを見ている陸の目が鋭い。 「陸、その目がいいね。」 「何言ってんの。 流星は甘いのがお好き、なんじゃねえの?」  優しく抱き寄せて頭を抱えて、深いくちづけを交わす。ソファに座って流星の肩に頭を預けている陸。流星が怒ったように 「何回、水盃をさせるんだよ。 俺、その度に生きた心地がしなかったぜ。  もう嫌だからな。」  あの日、乗り込んだのは,陸と倭塾の命知らずたちだった。タケルの指示で隙のない布陣だった。  しかし、党員の奴らはしっかり逃げ道を用意していた。  秋吉が捕まって全容解明となるわけではなかった。今までの秋吉の罪が全て暴露される事は無いのかもしれない。  いつからC国との繋がりを持ったのか? のらりくらりと、完全黙秘だった。  ドリーム事件の鑑定が進んだ。 あのコンテナの遺体のDNA型と、高瀬医師の持っていた臍帯には、一致するものがあったようだ。これはすごい事だ。  確かとは言えない。90%同じだ、と言えるのが二つほどあったという。  新聞でその記事を見て、バーテンダーの健ちゃんは、自殺した妹の遺髪を持って駆けつけた。  吉田の力添えで実現した事だった。警察は嫌な顔をした。 「妹の髪です。親子関係の鑑定をしてほしい。 万が一、同じDNA型と分かったら教えてほしいんや。」 「文字通り、万に一つの可能性だ。」 「それでダメやったら諦めもせなあかん。 オカンに報告するんで。」 「確率は低いなぁ。」 他にも手を挙げる人はいるのか?  里子に出して,終わらせた子供の行く末を知りたく無いのが普通だろう。無かった事にしたいはず。  そもそも、医学が進歩して移植する臓器が足りなくなった。日本では年令制限の厳しいガイドラインが設けられた。特に子供の臓器移植は制限された。  慢性臓器不足で、C国が発表した臓器の値段は世界中を震撼させた。  腎臓が1000万。肝臓が、大人500万、子供205万。心臓がなぜか、205万だと言う。  それまで子供の臓器の供給元はフィリピンが多かったのに、なぜかC国が劇的に増えた。  需要に対して供給が間に合うようになったのだ。おかしな話だ。  臓器目的の誘拐や殺人が増えた。 少数民族が弾圧されている。それでも子供の臓器が足りない、と言う事だ。  ドリーム事件はタイムリーだった⁈

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