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第162話 健ちゃん
「やっぱり、わからないんやて。」
警察のDNA鑑定の結果、コンテナの赤ん坊と妹さんとの親子関係を立証する事はできなかったと言う。ガッカリして帰ってきたバーテンダーの健ちゃん。
「でも、一致しなかったって言うのは、
妹さんの子供が里子に出されて,どこかで元気に暮らしてるってことかもしれないよ。」
左千夫が言った。辿れないとしても,亡くなったとは限らない。いい里親に引き取られて幸せに成長している、と思った方がいい。
コンテナの赤ん坊があまりにも残酷で、他の赤ちゃんも酷い目にあってると思い込んでいた。
「ああ、オカンにはそう言っておこうと思てんねん。一目会いたいなんて言わんやろなぁ。」
ジュネも二日休んだだけでいつもの営業に戻った。タケルたち倭塾のメンバーも事情聴取されたがそれだけで済んだ。
「銃刀法違反でパクられるかと思ったけどな。」「あと凶器準備集合罪とか。」
吉田が上手い事、隠してくれた。
あの後、秋吉にスタッフとして雇われた若い奴らは、ずいぶん絞られたようだ。
なんと連中はジュネに流れてきた。
「どうも。タケルさんを慕ってきました。」
「ここはホストクラブだよ。
タケルはここでホストやってるけど、
元々右翼団体だ。おまえら、やる気あんの?」
零士が呆れている。十人十色で、美形ではない。ホストは無理筋だろう。
みんな闇バイトで知り合ったと言う。
陸が面白そうに
「おまえら、極道の天敵、トクリュウだな。」
匿名・流動型犯罪。
ネットで募ってその場で仕事。終われば解散。
時給はべらぼうにいいが、何の保証もない。
お互いに面識もないから捕まってもその場で終わる。芋づる式に捕まる事は無い。
「免許証のコピー撮られてるんで逃げらんねえんだ。」
そいつらがホストになりたい、と店にやって来た。玉石混淆。使えそうもない。
「また、厄介な事になったな。」
警察は取り締まりを強化した。釈放されて帰れるものは帰ったが、数人残った。
保護した子供たちは警察を通じて児童相談所に連れて行かれた。
親は探しに来ない。捜索願も出されていない。
陸はいつか引き取りたいと思った。今は無理だ。
「世の中、ずいぶん冷たくなったもんだな。
親子の縁も薄い。
「とりあえずうちの店は誰でもウェルカムではないよ。」
厳しい適性検査と面接がある。
「右翼に入りたいのは、誰だ?」
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