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第166話 ジャズを聞く
店の終わりに、陸が一階のジャズバーを覗いた。静かにヘレンメリルが歌うレコードが回っている。
バーテンダーの健ちゃんがいた。
「よぉ、マスター、流星に何かカクテルを作ってくれ。あまり強くないやつ、な。」
陸のオーダーに
「何だよ、俺はウヰスキー飲むの。シングルモルトくれよ。」
珍しく流星が酔っている。カウンターで陸の肩に頭を乗せて支えてもらっている。
「なんや、色男は酔っ払っても色男やなぁ。
絵になるわ。」
「何にする?軽いの。」
「マスター、あれ、ベルガモットの囁きだっけ。
アイスティーみたいなの。」
「了解。スピリッツ抜きで?」
「なんやそれやったらただのオレンジアイスティーでんがな。」
「いいんだよ、可愛い流星が酔い潰れてんだから。」
「陸さん、甘いなぁ甘々やん。歯ぁ溶けるデェ。
マスターうちの社長,こんなお人でっか?」
マスターは笑ってグラスにオレンジを飾った。
「そう言えば、この前トクリュウの話してたでしょ。」
「ああ、何かわかったかい?」
「闇バイトの話きいたんだけど。」
秋吉があのオークション用に手配したバイト君たちだ。彼らを集めたのはミャンマー経由のアカウントからだったそうだ。
「この頃は国内で動かないで国を越えて招集がかかる。元締めが外国人でエグい事になってるって。」
「うちの倭塾に来た若い奴もなんか言ってたな。
日本で集められたけど、電話の相手は日本語が変だったって。」
「あのドリームで集められた里子も追跡するとある場所から突然消えるんだって。」
「ある場所って海外だろ?C国か?」
「何やそれ?」
「とにかく闇バイトはあっちで募集してんだよ。
秋吉ってのが何か知ってるだろうな。」
秋吉は、警察っていう鉄壁の守りの中だ。
自白するのだろうか?
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