170 / 198
第170話 謎は解けない
吉田が「ジュネ」に顔を出した。
「やっぱり、きな臭いのはC国だ。
トクリュウのアジトが摘発された。
ミャンマーとカンボジアとそこに囲まれた一帯。
C国、国境付近だ。
工業団地の跡を使って国際詐欺の拠点にしている。残念ながら手が出せない。」
警察は国外の事には無力だ。国際手配しても、次々に拠点を変える。
「詐欺事件はまた,別だ。
人身売買が問題だ。臓器の事だ。」
「個人の手に負えない案件だ。
広範囲に広がりすぎている。」
「首謀者を捕まえれば?」
警察の発表によると,海外で闇バイトに使われている日本人はかなりの数になる。
パスポートを申請させ、出国したら取り上げる。それからは軟禁状態で不眠不休で働かされる。
「奴らは普通に会話できる日本人が欲しいんだ。
日本で食い詰めて借金まみれの若い奴を縛り付けて働かせる。かけ子のノルマがきつくて酷い制裁が待っている。死にそうになったら、臓器を取り出す。広い山があるから死体など捨てるところはたくさんある。 地獄の連鎖だな。」
実態が、うっすらとだが、見えてくる。
陸は港の李星輝に会いに行った。
「梁大人にも話を聞きたい。
闇バイトと臓器売買の実態を。少しでも何か知っていたら。外国の話になってしまった。
でも、被害者は日本人なんだ。証拠がないと。」
華僑の間でも懸念していると言う。
「真面目に商売やって来たのに、まるで敵のように見られる。」
「ずっと友好的に商売して来たのに。」
極端な事件が報道される。港のコンテナの管理を担って来た梁大人は嘆く。
「汚いことをやっていたら日本人に信用されない。お互いにウィンウィンの関係だったのに、
この頃信頼関係が崩れてきた。」
確かに異国で信頼を構築するのは並大抵の事ではなかったろう。
李が、
「俺たち半グレだと言われてるけど
インバウンドで来ている旅行客のマナーの悪さには手を焼いてるんだ。」
C国は一枚岩ではなさそうだ。
共通の思想で一丸となっている、というのはただのポーズに過ぎない。
今や様々な問題が噴出しているようだ。
「我々も個人的には手が出せない。
彼らの偏った思想は、天○門事件でわかっている。これ以上被害者を出さないために、我々に何が出来るか?」
ともだちにシェアしよう!

