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第174話 関係者
「健ちゃん、何か知ってる事があるって人が来た。」
蓮が案内して女の人が来た。おずおずと周りを見回して
「あのう、こう言うところ初めてなんです。」
「いらっしゃい。
気にせえへんかて取って食うたりはしまへんで。
何、飲まはります?」
「えーと、よくわからないんでジンフィズとか出来ます?」
「ジンのお好みはどないですか?」
「えーと?」
「ゴードン、ビーフイーター、日本の翠ってのもありまっせ。お客さんならボンベイサファイアがお似合いでんなぁ。」
「じゃあ、それで。」
「ソーダはウィルキンソンでええでっか?」
「健ちゃん、蘊蓄はいいから早く作って差し上げて。」
支配人の零士に叱られた。
「おお怖っ。」
健ちゃんはソーダ以外の材料を入れたシェーカーを振った。
目の前のグラスを見つめながら,彼女は話し始めた。
「この前、警察にDNA鑑定を依頼したと聞きました。あのドリーム事件の関係者の方ですか?」
「なにか知ってるんでっか? 警察が誰でも鑑定してくれるわけ、ちゃいまんで。」
「実は私も5年前、極秘出産をしたんです。
高校生でした。今21才です。
田中あかりと言います。」
「初めて会ったばかりの俺にそんな話ししてええんでっか? 」
個人情報の最たるものだ。
「子供がどうしてるか知りたいんです。
元気だったら、ひと目会いたい。」
「無理でんな。」
当時のニュースでは、海外に売り飛ばした、と報道されていた。
当時の政府は、表向きNPO法人、ドリームに丸投げして赤ん坊を売り飛ばした。
2.1億円売り上げたそうだ.政権交代したし、
ドリームは今は倒産して跡形も無い。
「子供に会うんは、まず無理でんな。
港のコンテナから変死体が上がったいうて、ワシも髪の毛持っていったんですわ。
あ,妹のやで。 結果一致せず、やったわ。」
「里子に出されたんですよね。」
売り飛ばした、と言われている。外国の金持ちに買われたのなら、元気でいるかもしれない。
「あんた、その子に会ってどないするん?」
何も考えていないようだった。
「夢を見たんです。赤ちゃんは助けてって泣いてた。」
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