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第177話 繋がり
太郎が生まれる前、まだ学生だった徹司と美咲は、互いに惹かれあって恋に落ちた。
それまでずっと幼馴染みの零士が好きだった美咲は何かにつけて零士の世話を焼いていた。
2才年上の零士はずっと病気療養させられていたから大学に入った時は美咲と同学年になっていた。美咲の看護科に零士も入ってきた。
秋吉教授の診断で、零士の人生は束縛されていた。親は、精神病は不治の病だから、秋吉先生が責任を持って面倒見る、と丸め込まれていた。
どうしていいのか、悩んでいる親だった。
「零士も看護師になるの?」
美咲は喜んだが零士は興味なさそうだった。
頭はいいので大学には受かったが、あまり先の事は考えていないようだった。
その類稀な美貌は周囲から警戒された。
「あんな綺麗な人が友達になってくれるはずないよ。」
男も女も警戒して距離を置く。零士は孤独だった。いつも秋吉の言いなりになって逆らわなかったから、秋吉は図に乗ってきた。
零士の奔放な性生活を許した。自由にさせているように見えたが、いつも隠しカメラで盗撮されていた。
徹司と同郷の草太に出会ったのは、大学の自転車置き場だった。少ない仕送りで地味に暮らす草太に零士は興味を持った。
秋吉から自由に使えるタワーマンションの部屋を与えられていた。
「ここ、零士の部屋じゃないよね。
私物が全然ないもん。」
「ああ、ここはヤリ部屋。」
「えっ?」
「いつも女連れ込んでヤル部屋だよ。
タワマンだとホイホイ付いてくるんだ。」
零士から意外な言葉を聞かされた。
「俺、男だよ。間違えてない?」
「男でもいいんだ。好きになったから。」
「俺の気持ちはどうなるんだよ。」
ガシッと肩を掴まれてベッドの上に押し倒された。
草太は男も女もない、初めてだった。零士は慣れているようだ。
草太はバイトしているスーパーマーケットで見かけた時から気になっていた。人目を引く美しい男。美咲と,他にも数人の取り巻きを連れて華やかな陽キャグループ。
草太には縁のない輩だと眺めていたが、零士の美貌からは目が離せなかった。
その零士に、初めて、を奪われた。
(男なのに奪われたって何だよ。情けねえな。)
そのマンションには盗撮のためのカメラがいたるところに仕掛けられていた。
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