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第178話 ジュネの客
草太と出会ってから16年が過ぎた。
徹司と美咲が結婚して太郎が生まれた。
裕福な徹司の実家で祝福された結婚だったが、お産の経過が悪く、美咲は亡くなってしまった。
秋吉は、胡散臭いことを数々やっていた。いくつかが明るみに出て秋吉は懲役になった。
今は前科持ちで、自身が精神病とされている。
いわば保護観察中のようなものだ。
そんな秋吉を警察は泳がせている。
自由に出歩いて、ジュネにまで顔を出す。未だ零士の周りをうろついている。
秋吉の尽きぬ資産はどこから来るのか?
数々の悪事の資金源は?
零士とその仲間たちの身辺を嗅ぎ回る事で、16才の太郎にたどり着いた。
(なんて綺麗な少年だ⁈)
息せき切って太郎が陸の事務所に入って来た。
(ここの極道のお手つきか?
へえ、可愛いじゃないか。
買いたい客がたくさんいそうだな。)
「陸! 走って来たんだ。」
ジュネは18才未満、立ち入り禁止の店だがもう太郎は平気で入ってくる。良くない事だと思いはするが強く言えてない。
「よしよし太郎はピアノ終わったんだな。」
「うん、美弦と一緒に来たんだ。
あと、徹司も来てる。」
陸は焦った。徹司には頭が上がらない。
「挨拶に行くか?」
「いいよ、煩いから。」
「お、反抗期か?」
美弦は9時からピアノ演奏だから、それまで徹司と酒を飲むらしい。
太郎と陸は半ば公認になっている。
こんな極道が太郎の恋人なのか、信じられない。
「いらっしゃいませ。」
そこに秋吉が入って来た。徹司が
「ウッ、秋吉!」
零士の顔を見た。
申し訳なさそうに徹司を見る。小さな声で
「この頃、よく来るんですよ。」
「じゃ、ごゆっくり。」
陸は太郎のいる事務所に引っ込んだ。
ホストクラブの接客は、なるべく太郎には見せたくない。以前ほどエロい事はないが、子供に見せるのはあまり好ましくない。
美弦と徹司の関係もあまり変化はない。
もう落ち着きすぎの熟年カップルのようだ。
カウンターで健ちゃん相手に何か飲んでいる。
関西人は話題が豊富だ。
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