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第182話 事故

 秋吉は、父親の友人を訪ねた。C国人のコミュニティーだ。父親も仕事関係で彼らと交流がある。 「ハニートラップってどうやるんですか?」 「美人計か? 何するんだ。」  秋吉は、父とその友人のC国マフィアの男に全部話した。張さんという、その人はとても怒った。 「シャオリーベンが! アイゴー、リーベングイツめが!」  泣いて怒ってくれた。 「ウチの組織の美人計にやらせるネ。 名前と学校名を教えなさい。」  秋吉は思わぬ怒りに震えている張さんに頼もしさを覚えた。 「C国では、面子を重んじる。 我が息子が辱めを受けたなら、何倍にもして返さなくては。」  父親が乗ってくるとは思わなかった。  それから数日間小風君たちの顔は見なかった。 「会わないなぁ。授業にも出て来ない?」  ホームルームで先生が 「小風君が亡くなりました。 自動車事故でした。一緒にいた同級生が5人、かなりの重症だそうで、これからも死亡者が増えそうです。」  教師はツラそうな顔をしていた。 学校一の秀才を失ったのだ。大学進学率に響くのだろう。  事故は凄惨なものだったそうだ。進学塾の送迎バスが横転して、開いていた窓から転がり落ちた 小風君を後ろから来たトラックが引きずり、生きたまま、3キロほど走ってやっと車に身体が挟まれているのに気付いたという。  両手両足が千切れてしまった状態で、まだ生きていた。引き裂かれた身体でも、意識はしっかりしていて、 「痛いよ痛いよ!助けて助けて!」  ダルマのような見るも、無惨な身体でゆっくり死んで行ったという。苦しみが長引いたようだと 救急隊員が言ったそうだ。  秋吉は張さんに会いに行った。 「張さんが仕組んだんですか? ものすごく酷い事になってます。」 「出来るだけ、意識をはっきりとさせ、死ぬまでの苦しみを長くしてあげたんだよ。  C国のやり方ネ。相当苦しんだだろうね。 早く死んで楽になりたかっただろう。  毅、気が済んだかね。」 「はい、ありがとうございました。 何をお礼したらいいでしょう?」 「ああ、ダメダメ、殺人教唆になってしまう。」  張さんは何も要求しなかった。

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