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第185話 タカシとタケシ

 少年はタカシと名乗った。 「おじさんは?」 「え?あ,俺は毅(タケシ)似てるな。 タカシとタケシだ。おじさんはねえだろ。 18才だよ。」  サスケを連れて一緒に家に帰った。 家には誰もいない。母親は知り合いの中華料理屋で働いている。父親は何か貿易の仕事で忙しそうだ。  サスケと猫たちに餌をやって、タカシにコーラを出してやった。 「ぷはっ、コーラ飲むの初めてだ。」 「ああ、子供は炭酸ダメか?ごめん。」  牛乳を出してやった。ありあわせのビスケットを見つけて渡す。タカシは急いで食べ始めた。 「なんだ、腹減ってたのか?」 「うん。」  学校に行ってないから給食もない。昼飯がまだだったらしい。 「なんか、作ってやるよ。」  チャーハンは得意だ。本場の味だ。 冷凍の餃子も焼いてやる。評判のいい母親の店のものだ。  すごい勢いで平らげた。 「美味しかった。 ごちそうさまでした。」  皿を台所に片付けて洗っている。躾のいいガキだ。  サスケがソファに乗って眠っている。 猫たちもキャットタワーに自分の居場所を見つけて眠っている。 「珍しいな。全く警戒心がないなんて。 知らない人がいると興奮して大変なんだよ。」 「オレ、みんな好きだから。」  むっくり顔を上げて、気難しい猫のペイがこっちに来た。座っているタカシの膝に乗った。 「へぇ、珍しいこともあるもんだ。 こいつはペイ。北って書いてペイだ。 あと、トン(東)ナン(南)シャア(西) チュン(中)リーチ(立直)ピンフ(平和)。みんな麻雀から取った名前なんだ。」 「おもしろいね。」  秋吉が柄にも無く親切に教えている。 犬,猫を愛する人は大事にしたい。  C国の市場には、生きた可愛い子猫や子犬が売られている。買って帰って無造作に殺して食う。  この文化が許せない。動物のことを考えるとキリがないが、ツラくてたまらない。  猫たちが集まってきて膝は満員になった。 サスケも背中に乗ってきた。 「毅、みんな大好きだって言ってるよ。」 「ははは、いつもの事だよ。重たいな。」

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