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第190話 盗撮

 秋吉は盗撮が好きだった。マンションのいたるところにカメラが仕掛けてある。  被写体は零士だった。零士が連れ込む恋人たち。このところ零士がご執心なのは同じ大学の泉草太。  可愛い顔をしている。色々な角度から写真が撮られている。  実際に零士を犯すより、盗撮した写真を見るのが好きなのは変態故か?  零士はこんな秋吉から離れようとしていた。  秋吉は、登龍会にコネができた。会長の兄だと言う堂島孝平だった。 (こいつはクズだ。児童ポルノの顧客を紹介しろと迫る。一緒に仕事をするハメになった。  ヤバい匂いしかしない。) 若頭でジュネを仕切っている陸を紹介された。  一緒に仕事をするために堂島孝平から託された。  陸は若頭だと言う、メチャクチャいい男だ。 仕事をする相手は必ず身元を洗う。どんな人間か把握しておく。そして、隠している事を暴き出すのが好きなのだ。  陸が触れられたく無いその親は、孝平が使う掃除屋だった。ヒットマン。殺し屋。汚い仕事をやらせる。片付けて来た者は数知れず。闇を抱えて来た。そんな男がドジを踏んだのは、リクとハナ。自分の子供をネグレクトと虐待で死なせてしまったからだ。リクはなんとか助かった。  今から28年前の事だ。子殺しから余罪が暴かれた。数えきれない被害者がいるはず。  検察の求刑は死刑。状況証拠しか無く、被害者の遺体も見つからなかった。  それで何年も執行されず、長い間、拘置所の中だった。一緒に逮捕された母親は懲役18年を務め上げて娑婆に出て来ていた。  秋吉は相変わらず零士の周りをうろついて、太郎の成長を見ていた。  太郎の親が元教え子の徹司と美咲だと知った。 学生結婚をして太郎が生まれ、難産で美咲は亡くなってしまったという。  誘拐事件の囮捜査に借り出されて、警察に協力し、マスコミに騒がれた7才の太郎を知る事になる。初めて太郎を見た時の衝撃。 「タカシ!何でここにいるんだ! タカシだろ?」  秋吉にはタカシにそっくりに見えた。 秋吉は信じられなかった。母親とどこか遠くへ引っ越したと聞いていた。 (ああ、タカシじゃないな。) 似て非なるもの。秋吉は偶然見かけた太郎に、あのタカシを思い出されてつらくなった。  忘れられない少年。それから折りに触れて太郎の成長を見守って来た。  零士や草太に可愛がられて、なお、今は陸の寵愛を受けて守られている。美しい少年。もう青年か。  

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