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第193話 左千夫
「左千夫のさちは、さち薄いサチだな。」
来た時の貧相な感じは大分取れてイケメンホストに近付いてきた。
「親父が死んだのか、ハッキリさせたいんだ。
保険金請求したいとおふくろが言うんで。」
誰かから入れ知恵されたようだ。陸が始末した荒井左千夫の父親。とんだパワハラ野郎だった。
事の経緯は流星も知っている。
現,会長、堂島鉄平に相談した。
「孝平が蒔いた種だ。しょうがねえな。
この事は墓の中まで持って行け。
話をつけてやろうか?あの荒井とかいうやつに。
クズな父親だったが、なぁ。」
「金に困っているようです。
俺、いくらか用立ててもいいか、と。」
「おまえは墓まで持って行け!
極道舐めるな。そのガキに親父がクズだった事を思い知らせてやれ。」
鉄平はものすごく怒っていた。
「陸が拾ってやった事を感謝するスジだろう。
舐めた事言わせてるんじゃねえよ。」
周りで聞いていた若いもんたちが呆れている。
「陸ちゃんヨォ。この頃ぬるいんじゃね?
チクッた奴を炙り出せ。」
ずいぶん前の事だ。今更蒸し返しても、左千夫の父親は東京湾の魚の餌だ。
(誰が一体?)
流星はもしかしたら、と思った。
元カノの由香だ。あの一件に関わったのは,組の者を除けば、あの課長にいいように使われた由香が思い浮かぶ。
何も知らない息子の左千夫が陸を親の仇と知ったら。
流星は由香に会いに行った。
待ち合わせのカフェで久しぶりに会う、流星のあまりのかっこよさに焦る由香がいた。
「久しぶり。素敵になったね。」
由香はなんだか少しやつれていた。
「荒井課長の息子は、陸さんに世話になってジュネでホストやってるよ。
ああ、知ってたか。」
「うん、あいつも使えるようになったんだ?」
流星はすぐに本題に入った。
「左千夫のところに変なメールが来たんだ。
おまえは何を知ってる?」
「あのヤクザが左千夫の父親、荒井課長を殺ったんでしょ?」
「何でそう思う?
由香はもう少し頭がいいと思ったがなぁ。
誰から聞いた?」
「私の彼氏。チャイマの幹部。」
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