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第194話 極道
「人ひとり消しちゃうんだね。
極道って、怖い怖い。」
(こいつ、何が望みなんだ?)
「証拠もないのに今更何言ってんの?」
「そうなのよ。証拠がない。
あたしは状況から想像したらアンタんとこの、
若頭が浮かんだんだ。」
「本物ヤクザ相手にいい度胸だな。
チャイマだって?」
女一人でヤクザを強請るなんてのは、普通考えないだろ。
「由香は今何やってんの?」
「あたし?
錦糸町でキャバ嬢だよ。」
(チャイマに空気入れられてんな。)
「ウチの若頭は人消したりしないよ。
言いがかりもほどがある。
おまえの彼氏が言ってるだけだろ。
適当言ってると本当に沈めるぞ。」
ウチは荒っぽいのが多いんだ、と言い聞かせて帰って来た。
早速由香の身辺を洗う。倭塾の連中に頼んだ。
そして陸に報告すると、
「吉田だ。そういうのは吉田の仕事。」
吉田が洗い出した由香の彼氏は、王天尊と言った。なんとチャイマの幹部構成員だそうだ。
それで、由香の元いた会社のバックを洗ったら登龍会が出て来たという。これは金になりそうだ、と鼻を突っ込んで来たらしい。
「また、めんどくせえのが突っ込んで来やがった。」
陸がウンザリしていると、左千夫がやって来た。
「どうした?
父親が気になるってか。
店の方はもう慣れたか?」
「はい、健ちゃんが良くしてくれます。
アレックスも。」
「おまえ、アレックスとデキテルそうじゃねえか?」
「いえ、あのう、、」
赤くなって、今日は別件だという。
「変な話を聞いたって顔してるよ。
言ってみな。」
父親の部下だった由香から話が来たという。
左千夫にとって由香は初めての女だったから、言うことは全部信用してしまう。
登龍会が当時、偽装倒産で鈴木ソリューションを片付けようとしていた事を知った。
鈴木ソリューションが倒産したら、父親の会社は莫大な負債を被る。責任をとって荒井課長は失踪したのだ、という絵図。
「責任を取るなら失踪なんかダメだろ。
逃げるなよ。」
それで行方不明なのは陸が始末したからだ、と言っている。由香から聞いたらしい。
(親子二代で掃除屋だと⁈
胸糞だ。荒井はビビって自殺したんだよ。
俺は殺りたくなかったんだ。)
初めて真相が明かされる。
陸は人殺しなどしたくないのだ。
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