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第196話 張大兄と王天尊
そんな秋吉が太郎を見かけた。立派になった。
もう大人と言ってもいい。
秋吉は少年が好きなのではなくて太郎一人を追いかけていたことに気付いた。太郎の成長を彼なりに見守って来たのだ。
張大兄に呼び出された。自分の親のような張大兄には逆らえない。
「チャイマの王(わん)ってのがいるんだが、力になってやってくれんか?」
秋吉はとうに50才を越えた。もういいだろう。
警察では要注意人物と言われている。それでも自由に暮らしていられるのは何故だろう。
父のつながりで、何とか続いている張大兄との縁。年令はかなり上のはず。
「毅、興味深い話があるんだよ。
実はC国でも今や一枚岩とは言えない状況になっているらしい。
一党独裁の国家は、蟻の一穴で脆くなる。
若い世代が付いてこないそうだ。」
残念そうに言った。
「やっぱり価値観の違いが不満となって現れている。文化を否定しても、その文化を求める世代が出て来た。
私も日本で懇意にしているドラゴンの若い仲間と話す事がある。」
チャイマに舎弟のような者がいると言う。
そいつは錦○町のチャイマで、王天尊と言った。
「しみじみ話すと面白い奴で、今のC国に不満があると言う。」
C国の若者は勤勉とは程遠い。自分勝手な価値観の者が増えた。一人っ子政策の悪い結果が出ている。みんなわがままで怠け者。
文化を否定したら拠り所はなくなる。
C国の若者は日本の文化が大好きだ。C国では禁止されているが若者はそれが大好きなのだ。
ドラゴンの仲間たちが海賊版を闇で販売している。すごい売れ行きだそうだ。
「私もC国の昔の物語が好きなんだよ。
三○志演義や水○伝、紅○夢なんか大好きだ。
○語は規範になるし、金○梅はエロチックだ。
あげればキリがない、一大文学も焚書で焼かれた歴史がある。
C国の山々も美しい。今の一党独裁で失われてしまった四千年の歴史が尊く感じるのだよ。」
張大兄は、こんな話をチャイマの若い奴、王天尊と話して意気投合したのだそうだ。
それから一部の独裁者と、日本のこれも一部の政治家が結託して悪質なビジネスを展開した過去が暴露されつつある。
恐るべき秘密が暴かれようとしていた。
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