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第197話 迷宮入り
吉田も何か掴んだようだ。バーテンダーの健ちゃんに話がある、とカウンターに座った。
陸も零士も呼ばれている。流星も控えめに座っている。
「警察からドリーム事件について、幕引きを迫られた。五年前の事件で東○都知事のばあさんが絡んでる。迷宮入り、と言う事で。
養子に出した子供の名簿は無いんだそうだ。」
「そんな杜撰な事でええんか?
まだ.この世のどこかで生きて育ってるんやないんか?
追跡があかん,言うて、この国はどないなってるんや?
人の命やで!」
健ちゃんが悔しがる。
吉田は、流星の元カノの関係でチャイマの王天尊に繋がったという。
「チャイマも敵ではない、って感じだ。
王天尊は出来た男だよ。
陸に挨拶したい、と言ってる。
どうだ?一席設けるぞ。」
陸は話を聞いて
「そうだな、事を構えるより、会食でもするのがいいな。」
そう言って倭塾のタケルを見た。
「ドンパチやるより、友好的に話したいですね。
以前、太郎君を攫ってヤキ入れられた半グレ連中のバックもこのチャイマでしょ?」
あの入れ墨坊主とロン毛デブがゲーセンでスカウトされた、と言っていた。
吉田のセッティングで会食の場が設けられた。
ジュネを貸し切って「マダム関口」のケータリングを頼んだ。
「よく、予約取れましたね、マダム関口。」
「ああ、藤尾さんの口利きだ。」
近頃、新宿より羽振りがいいという錦○町のチャイマは、仲間を数人連れて、由香と一緒に現れた。
ピリついた空気をモノともせず、堂々と入って来たのは、背の低い童顔の男だった。
一瞬顔を見合わせた陸と零士は、すぐに礼儀正しく挨拶をした。彼らはプロだ。接客のプロ。
小兵の王天尊に寄り添うように由香が高そうなドレスで立っている。
「今日は,わざわざおいでいただき、痛み入ります。」
「いやぁ、初めまして。
さすがホストクラブ。イケメン揃いですなぁ。」
握手をした。思いがけず強い力だ。
(王は負けず嫌い、と見た。
運転手がついてるって事は、酒が飲めるんだな。
よしっ、今夜は飲もう!)
陸は嬉しくなった。王は微塵も殺気を感じさせないから。
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