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第198話 邂逅

 王天尊は一部の隙もない男だった。小兵だが、無駄のない筋肉が見て取れる。  陸も零士も流星も180センチ超えの身長で、 見下ろすような形になった。  150センチも無いだろう。それでもその貫禄はすごいものがあった。 「どうぞお掛けになってください。」 勧めたソファに優雅に腰を下ろした。  由香に手を差し伸べる。レディに優しい。 名刺の交換をした。王の名刺は 「天尊公司 代表 王天尊」 と書かれたシンプルなものだった。  陸もシンプルな店の名刺を出した。 「ボーイズバー ジュネ 安藤陸」  組の名前は入っていない。 名刺だけ見るとお互いに堅気のようだった。 「陸さん、お噂はかねがね伺っています。」  握手した。 草太と蓮がワゴンを押してシャンパンクーラーを運んできた。ケータリングの料理もゾクゾクと運ばれて来た。 「シャンパンでよろしかったでしょうか?」 「乾杯はシャンパンで。 あとは老酒もありますよ。」  和やかに食事は進んだ。 遅れて吉田と張大兄がやって来た。 「すみません、警察に寄ってきました。 面倒な事が多くて。」  みんな緊張を解そうと酒を飲み過ぎている。  食事も大体片付いて飲み足りない人はカウンターバーに移動した。 「手打ちにするのか、と聞かれたけど、その必要ありますか?」 手打ちとは仲直りという事だ。仲直りするような仲たがいはしていない。  チャイマは友好的だった。 「王さん、何かお聞きになりたい事があるのでしょうか?」 「ああ、うちの由香が気になる事があると言うので。」 「今日は左千夫は来てないの?」 「呼びましょうか?」  健ちゃんがマンションに電話している。 程なくして,左千夫は来た。 「あの、俺の父親は生きてるんでしょうか? 死んでるのなら遺体は何処にあるのか? 誰が死なせたのか?」 「陸、どう? 本当の事を言いなさいよ。」  由香が糾弾する。流星が 「俺、知ってるよ。 信じなくてもいいけど、真実は一つだ。 荒井課長は自殺だよ。 目の前で見た。服毒自殺だ。」

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