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第199話 真相

 流星の言葉にその場は静まり返った。 「荒井課長は自分のやった事をよくわかっていたんだな。  裏金を使って銀座のホステスに貢いでいた。 会社の金を使い込んだ。ヤクザの金だともわからずに。息子の受験で物入りだった。  鈴木ソリューションに回る金だった。組の金を使い込んで、帳簿に残らないようにしたのがバレた。莫大な借入金だったから。」 「その辺のことは、俺が気付いて課長に訊いたから、課長の風当たりがキツくなった。」  流星の言葉に、陸が話の続きを引き取った。 「ひどい金の流れに気付いて、問いただしたらビビり始めた。ヤクザの金だからな。」  由香も 「覚えてるわ。逆ギレして来て社員に当たり散らした。セクハラ、パワハラ、酷い人だった。  夜のお誘いを断ったら酷い目にあったわ。」  話を聞いて人望のない課長の、人となりが見えて来た。  陸は、鈴木ソリューションの計画倒産の責任を全て荒井課長に行くように仕組んだってわけだ。  最後は債権者に詰められ、愛人まで炙り出されて、ヤクザに呼び出された。  もう死ぬしかないって所まで追い詰められての自殺だった。 「殺人教唆になるんじゃないの?」 「ああ、課長は覚悟していたんだ。自分で致死量の薬を用意していた。  極道に囲まれて、見ている前で工業用のシアン化合物、シアン化カリウムを飲んだんだ。  あっという間だった。」 問題はここからだった。鈴木ソリューションは堂島孝平のダミー会社で、荒井課長の会社を隠れ蓑にしていたから、自殺者を出すのはまずい、と判断した孝平が死体の始末を陸にやらせたのだ。 「これは、左千夫に申し訳ないな。」  孝平がいつもやるのは溶かしてアスファルトにする事だった。  陸は溶かすまでを慣れた奴にやらせて、自分で海に捨てた。 「コマセだよ。魚の餌。 江戸前の魚は人を食ってる。」  ヤクザがいつもやる手だ。海に捨てるのは嫌な仕事だったから、今時流行らない。  孝平伯父貴はそれを敢えて陸にやらせた。 「父親と同じだ。掃除屋だな。」  孝平伯父貴は悪どいことばかりやって来た。 「わかったか? 左千夫、おまえの親父を殺したのは陸でも誰でもない。親父自ら責任を取ったんだよ。  残されたものには何の関係もない。」  流星が陸の肩を抱いた。  

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