200 / 203

第200話 殺し屋竜のやり方

 昔、堂島孝平がいいように使っていた今関竜は 掃除屋として、孝平が、消せ、と言った人間を掃除して来た。この仕事には死体の始末も含まれる。竜のやり方は、死体をミンチにして海に撒く、という事だった。魚の餌にする。  近年、ミンチにした死体は凄惨を極めるため、 海まで運ばず、アスファルトに混ぜ込んで道路に 固めるやり方が主流になっている。  今関竜は死刑になったが、刑事訴追できた事件以外にも、見つからない殺人が相当数あるだろう、と言われている。  殺人の立件には、犯人の動機と遺体の存在が不可欠だ。  陸の場合、罪に問われるのは死体遺棄だが、証拠になる遺体がない。立件は難しいだろう。 「それでも、陸は罪の意識に苛まれて来たんだよ。左千夫、どうだ? 気が済んだかよ。」 吉田に言われて項垂れている左千夫。  左千夫は、遺体なき殺人をどうやって証明したら保険金が下りるのか、心配していた。  後日、陸は弁護士を立てて左千夫の母に多額の金を渡す書類を作った。保険金を当てにしなくても、それより多額の金で解決を図った。  資金は会長の堂島鉄平が出した。兄の孝平伯父貴と違って太っ腹な人だ。 「俺のハンチクな兄貴がいいように使った陸と、父親の竜、すまなかったな。  親子二代,呪いをかけたようなもんだ。」 「会長、ありがとうございます。 どこまでもついて回る親父の呪いだ。  せめて左千夫に本当の事が言えてよかった。」 由香が 「左千夫、あんたの父親はクズだったんだよ。 陸を恨むんじゃないよ。  それは流星だって知ってるよ。 天尊、帰ろう。」 「すみません。飛んだ修羅場をお見せしちまって。」 「いやぁ、いろんな事がよくわかって良かったじゃないか。  これを機に我々も仲良くやりましょう。」  チャイマの王天尊はえらく物分かりのいい奴だった。握手して 「今度会長のお許しが出たら、兄弟分の盃を頂きたい。」  そう言って帰って行った。  吉田と一緒に来た張大兄をみんなが不思議そうに見ていた。 「あの、こちらはどなたさんで?」 「ああ、秋吉のお目付役。 チャイニーズドラゴンの張大兄だ。」 「ああ、よろしく。秋吉とはどんな関係です?」 「ずっと、面倒を見て来た。 秋吉の父親とは盟友なんだ。」 「表に出ない悪事がたくさんある人ですよね、秋吉さん。」  零士が嫌な顔をして言った。

ともだちにシェアしよう!