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第32話 飾音と ***
俺のような奴を、卑怯だとか狡いとか、臆病だと言うのだろう。
飾音は想い人に、告白をする予定はないと言っていた。
そして、飾音を好きになった俺も、今後彼女を作るつもりはない。
だから、俺たちはずっと、この関係を続けていけるのだ。
――心は貰えなくても、身体だけでも。
「飾音、飾音ぇ……っ」
「ご主人様じゃなくて俺として抱いて欲しいって……その女と何かあったの? 彬良」
そう心配そうな声で尋ねながらも、飾音の動きは容赦がない。
まるで、久々に再会した恋人同士のように激しく、ねちっこく、俺のイイところを突いてくる。
そして、的確に。
「もっと、頂戴……っっ」
「うん、たくさんイっていいよ」
俺たちは、なんのオモチャも使わずに抱き合った。
飾音を愛しく思う気持ちが膨れ上がって、泣きそうになる。
ご主人様じゃなくても、こんなに気持ち良い。
触れる指先が、唇が優しくて、愛されているのではないかと錯覚しそうになる。
「飾音……っ」
好きだ。
でも、この想いを口にすれば、身体だけの関係どころか、親友ですらもいられなくなるかもしれない。
飾音なら、きっと大丈夫だとは思う。
けれども、もしかしたら距離を取られるかもしれない。
彬良をそんな気にさせてごめん。
彬良なら、割り切った関係を続けることが出来ると思ったから。
そんな、飾音の困ったような声まで聞こえてくるようだ。
だから、言えない。
はぁ、はぁ、と飾音の荒い吐息を聞いて、嬉しくなる。
俺の身体で欲情して、もっと欲しがってほしい。
とっくに飾音のモノになっていた俺の身体を、隅々まで可愛がって欲しい。
俺の身体の奥深くで、果てて欲しい。
ノーマルでシンプルなプレイなのに、いつもより感じる身体は、ぎゅう、と飾音のペニスを締め付ける。
「っく……」
「んあっ……♡♡」
飾音は俺のナカでゴムの中に放ち、俺は飾音の掌を汚す。
「彬良、気持ちいい……」
「ん。俺も」
ぬぽ♡ と飾音がゴムごとペニスを引き抜いて、自分の精液を処理する。
「……飾音、お願いがあるんだけど」
「ん?」
「あのさ、一度でいいから……ナマで、してくんない?」
「え?……いいの?」
「うん。シてみたい」
飾音の熱を、直に感じてみたい。
「彬良、やっぱりその女から何か言われた?」
「何も言われてないって」
探るように俺を見つめる飾音に、笑って返事をする。
「ね、お願い。飾音の大きいの、そのまま突っ込んで欲しい」
そう言いながら、俺は少し力を失った飾音のペニスにキスをする。
ゴムの味と、飾音のいやらしい味。
俺に欲情してくれた証拠だ。
愛しくて、嬉しくて、パクリと口に咥えるとフェラしながら自分のアナルを弄った。
「……彬良、俺から離れるとかって言わないよね?」
急にそんなことを言われ、俺は目をしばたく。
「言わないって。なんでそうなるんだよ」
「いや、夢でも見てるか、最後の思い出でもくれようとしてるんじゃないかって思って……」
「離れないよ。ずっと一緒にいる」
俺は心からそう言った。
でもそれは、飾音がずっと本命の人とは一緒にいられない、ことと同義だ。
酷い自分の言い草に、思わず涙が溢れそうになる。
なんてことを、俺は祈っているんだろう。
こんなの、親友とは呼べない。
飾音から俺の表情を見られないように俯いたまま、丁寧に飾音の性器を愛撫する。
俺の口内で直ぐに力を取り戻した飾音の肉棒に、えずきそうになりながらも夢中で唾液を絡ませた。
「っ、彬良、もういいから」
「……うん。じゃあ、そのままイれて」
俺は飾音と向かい合ったまま、自分の尻を両手で割り開いて恥ずかしい穴を見せつける。
飾音が躾けた、飾音のペットである俺を、見て欲しい。
飾音のためだけに拓かれた俺のアナルを、たくさん愛して欲しい。
「彬良……っ」
「あぁ……んッッ♡♡」
飾音は俺を押し倒すと、両足をぐっと抑え込む。
中心に当てたペニスを一気に奥まで挿入することはなく、味わうようにゆっくりと、出し入れを繰り返しながら沈み込ませていった。
ぬぷ……♡ ずりっ♡
ぬぷぷ……♡ ずりりっ♡
「早く、奥まで……♡ 焦らさない、で、飾音ぇ……っ♡♡」
俺は飾音の首に縋りつき、その先の快楽を求めてお尻を揺らした。
生の感触が、最高に気持ち良い。
もっと奥まで、味わいたい。
「奥まで?」
「うん……んああッ♡」
ずちゅん!!
ようやく欲しかったところまで挿入してもらえて、喜悦の涙で視界が滲む。
なのに今度はそのまま飾音は動きを止めて、動いてくれない。
「いやだぁ、飾音ぇ……♡ なんで、動いて、飾音のちんぽで、俺のケツマンコを苛めてよぉ……っ」
飾音にキスしながら、懇願する。
普段より鋭い飾音の眼光とチクチクと掌を刺す髭が野性味を感じて、ドキドキした。
「……うん。彬良の好きなところ、たくさんごしごししてあげる」
そう言うなり、種付けプレスで激しいピストンを開始する飾音。
ばちゅん! ばちゅん! ばちゅん♡♡!
「ああっ♡ そこ好きぃ♡♡」
飾音だけに聞かせる、嬌声。
「彬良、彬良はケツで感じちゃうえっちな男になっちゃったんだよ。わかってる?」
「わか、わかってるぅ♡♡」
「こんなセックス覚えたら、元の生活になんて、戻れるわけがないんだからね」
「うん、俺もう、飾音じゃないと、無理だからぁ……ッッ♡♡」
飾音が飽きるまで、俺は飾音に飼われるペットでいたい。
「ほら彬良、キスしよ」
「うん、飾音、好き……ッ♡♡」
胸が昂り過ぎて、ついポロリと本音が零れた。
飾音は一瞬動きをとめたが、直ぐに「俺も好きだよ」と言って俺の頭を撫で、そのままキスすることで深くは追求せずに流してくれる。
その後は突かれながら乳首を弄られ、俺はあっという間に達してしまった。
アナルの入り口がキュン♡ と縮んで飾音のペニスを締め上げ、飾音は慌てたように俺から距離を取ろうとした。
「駄目だ、彬良、出る……っ」
射精感が高まったらしい飾音の腰に俺は足を回して、逃げられないようにホールドする。
「飾音、このまま出して♡ 飾音の精子で、お腹たぷたぷにしてぇ……ッッ♡♡」
「彬良、そんなこと言われたら……我慢できなくなるしっ!」
どぷ、と。
俺のナカが、熱い液体で満たされていく。
「あったかい……」
俺はお腹に手をやりながら、飾音の初中出しに、感動を噛み締めた。
肩で息をしていた飾音は放った精液を最後の一滴まで流し込んだ余韻に浸っていたようだったが、直ぐにハッと我を取り戻すと慌ててペニスを引っこ抜く。
栓を抜かれたアナルは寂しげにひくひく♡ と動いて、受け止めきれない分の精液をトロリ♡ と垂れ流した。
「~~ああもう、風呂に行って、さっさと掻き出さないと。彬良、お腹壊すよ」
「ええ~、嫌だ。もう少しこのまま……」
男が男に放つ意味は、なんだろうか。
孕むことは決してない分、飾音の種がこの身体に染み込んでいけばいいと思ってしまう。
俺は飾音に抱え上げられ、風呂場に連れて行かれる。
ローションよりも丁寧に掻き出されて、その度に俺の身体はビクンビクンと反応した。
「ねぇ、一度しちゃったんだから、今日はとりあえず、二度も三度も同じじゃない?」
「……どこでそういう悪い誘いを覚えてきたんだ?」
そう言いながらも飾音は俺に、二度三度と、たくさんの精液を飲ませてくれた。
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