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第4話
動けない程ではない。体の動きが少し鈍くなった程度。
でもそれが余計腹立たしくて、俺はただでさえ弱かった抵抗を更に弱められて、惨めにズルズルと魔王の部屋に引き摺られて行く。
口だけはしっかり動くから「助けろ衛兵!おい!」と、鷹頭に呼びかけるけど鷹頭は居心地悪そうに、鷹らしからぬしょぼくれた目をして俺をキョロッと見るとすぐに目を逸らした。くそが。
そして部屋に連れ込まれた俺はベッドに放り込まれる。それでも鈍い動きで転げて逃げようとすると、ベッドから落ちる直前で魔王の腕に支えられ戻される。
「危ないだろう?」
「おめえよりはマシだよ。離せ。本当にもう許さねぇ。俺はメディアにお前のことバラして配置換えする。絶対する。」
「そんなことを聞いて大人しく戻すと思うのか?『一生ここから出さない』以外の選択肢が無くなるだろう?」
そう言って魔王は仰向けに寝かせた俺の両足をまとめて抱えて靴と靴下を脱がせるとスーッと俺の足の裏の匂いを嗅ぐ。
「お、まえ…っ!やめろ!ふざけんな!!」
気持ち悪いというのもあるが、自分ですら自覚が無い足の匂いを勝手に嗅がれる羞恥心がとにかくすごい。
神経毒と、足を抱えられてるせいで小さく足踏みするようにしか抵抗出来ないが、足の裏に魔王の鼻があるので踏み潰すつもりで精一杯動かす。
「ふふ。恥じらうお前も可愛いなぁ。」
そう言いながらも俺の足を膝上と膝下でガシリと掴んだ魔王は、グググ…とそれぞれを反対の方向に押しながら力を入れていく。まさか……。
「てっめえ!まじで足折ろうとすんな!くそ!くそ…!!一生恨むぞ!!」
俺は自由な両腕を懸命に振るが体を起こすことすら出来ないので魔王に俺の抵抗が届くことは無い。
「一生私のことを考えてくれるのか。ありがとう……。」
「っ…!この…サイコパス野郎!」
あああダメだダメだ。何かもっと効果的な言葉を。罵詈雑言は正直効かない。効いたことが無い。
足にかかる力がより一層強められていくのを感じて、これは最後に1度大きく力を入れられたら確実にバキリといくやつだ、と感じる。
やばいやばいやばいやばい。
もっと何か、何か何か、こいつの心を動かすような言葉…、
ああああ!!
知らねぇよそんなものぉ…!
「ぅ…うぅ"…、折るな…おるなよぉ…。」
俺は恐怖と混乱で涙を流しながら魔王に祈ることを選んだ。というかもう本能的にそんな行動に出た。
配送の仕事は足が動かなければできない。俺は配送の仕事が好きなんだ。色んな地域で、色んな人々の暮らしを繋ぎ、思いを届けるこの仕事が好きなんだ。
「や"め、ろよぉ…ひぐっ…折るな、ぁ"…っ!」
嗚咽混じりに訴える俺に、さすがの魔王も良心が傷んだのか、足にかけられていた力がフッと抜けたのを感じた。
「あぁ、泣くな泣くな。」
そう言って体を倒し俺の顔の横に肘をつくと頬を伝う涙を指で掬い上げる魔王。勢いに乗じてキスをされたが、この際足が無事なら何だって良い。
しかしキスをする時にググッとケツに押し付けられたものがあって、俺はキスの後、思わず下に視線をやってしまった。
「お前に泣かれると、興奮が抑えられない。」
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