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第10話
質問の意図が分からず暫く黙ってみたが、魔王も同じように黙ったままなので俺の方が先に折れた。
「嫌いじゃねぇよ。むしろ好きだ。」
「子供が好きなのになぜ私の子を身篭ったことを喜んでくれない?」
…………こいつ…正気か……?
呆れてものが言えなくなってしまう。
キッと睨むように魔王の目を見返すと、目が合ったことが嬉しいのか、魔王は少しだけ破顔した。
「逆に無理矢理妊娠させられてなんで喜ぶと思うんだよ。俺がこの子のことを愛さなかったらどうする気だ?」
ずっと疑問に思っていたことを尋ねるが、魔王はきょとん顔をした後に当然というように口を開く。
「変わらないさ。子も愛するし、変わらずお前のことも愛する。」
言い切った魔王に少し圧倒された。
こんなに気持ちよく言い切られてしまうと、まるで自分の方がおかしなことを言っているのでは、と思えてきてしまう。
「子には寂しい想いをさせてしまうだろうがな…。」
そして続けて言われたその言葉は、腹の奥に刺さるような感覚がした。
背景を考えればそれは絶対魔王が原因であるはずなのに、ズシリと言葉が重くのしかかる。
俺が少し眉間に皺を寄せたからか、魔王は伺うように俺を見つめた。
「……どうすれば良かった?」
「何が。」
「どうすれば、私はお前を手に入れられた?」
そんなことを真剣な顔で聞いてくる魔王。
こいつは本当に…。
自分が何もかもすっ飛ばした自覚は無いのか?普通に考えたら強姦、軟禁以外の選択肢の方が多いだろうが。
「もっとあんだろ。こう…、お友達から始める的なさぁ…。そもそも、なんで俺のことを好きなのかとか、まずはそこからだろ?」
溜め息をつきながらもそう答えると魔王は、ふっ…、と息を漏らして少し寂しそうな顔をして笑う。
「お前にとっては忘れてしまうくらいの些事だったのだな…。」
「……あ?」
「でもそれで良いんだ。私にとっての特別な優しさが、お前にとっての当たり前だった。だから私は、お前のことを好きになったんだ。」
呟くように言いながら魔王は俺の手を取って指先に口付ける。
「私はその当たり前を、私だけのために使ってほしいと願ってしまったんだ。」
そう言って、魔王はまた愛しそうに俺の腹を撫でた。
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