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先輩がおかしい2
【東峰 春side】
そして、冬森先輩とシフトが被っているバイトの日が訪れる。
「よ、東峰」
「こ、こんにちは。冬森先輩」
冬森先輩は、いつも通り…よりも、少しテンションが高めに感じられた。
あれ、これってもしかして、俺と付き合えて嬉しいから?
――って、ああ''ぁっ!!もう俺っすげー自意識野郎になってるからっ!馬鹿!
「東峰、休憩しようか」
「あ、…はいっ」
バイトの途中、冬森先輩に言われるまま、休憩室へ向かう。
休憩室には誰もおらず、思いがけず冬森先輩と2人きりになった。
だけどこれって……なって大丈夫か。
なんかよくわかんないけど俺たちって、今一応、付き合ってることになってるんだよな…。
「冬森先輩って、ホモなんですか?」
冬森先輩が椅子に腰掛けるのを見てから、何の考えもなしに、率直でそんなことを聞いてしまった。
って俺、何やってんだ。
冬森先輩からしたら、結構デリケートな問題かもしれないのに。
「ううん。それは全然ないと思うんだ」
冬森先輩は口元を緩くして言った。
最近、冬森先輩はよく笑う。
まあそっちの方がいいんだけど…話しやすいし。
「男で好きになったのはさ、実際東峰が初めてだから… 俺もちょっとよくわかんないんだ、そこんとこ」
視線を逸らしながら話す先輩に、俺は不覚にも胸がきゅっと甘く締め付けられる。
だって、初めてってそのワードなんか、俺すごい貴重な存在…みたいじゃん。
ちょっと、嬉しいし。
ただ、平然とそんなことを安易にバイトの休憩時間に言っちゃうところがちょっと怖いけど…。(付き合ってること周りにばれそうで)
「先輩がそんな感じで良かったです」
「え?」
俺はあははと愛想笑いする。
「だって、がちな男好きとかだったら、すごいビックリしてたと思うし。だけど先輩、そういうのじゃないっぽいし」
てっきり、先輩も同じように笑うんだろうと思っていたら、なぜか真顔だった。
あれ……?
「東峰、よくわかってないのかもしれないけど。俺
はホモじゃなくとも、東峰のこと…好きなんだからな?」
え……。
〝好き〟という言葉に思わず体をピタリと固まらせると、冬森先輩は、なぜか俺の隣の椅子に席を移動してきた。
えっっ、何で?
なんで席をわざわざ俺の横に移動してくんの!?
「あの、冬森先」
「東峰さ、もっと警戒心とか持った方がいい。いつも思うんだよ。東峰隙だらけで、すごい不安なんだ」
はいぃーーーーー……っっ!?
何も言えずにいると、いつの間にやら、冬森先輩の顔がひどく近くにあった。
「ふゆもりせ……っん!?」
もしかしてこれキスされる!?と思う余裕もなく、呆気なく唇を奪われた。まて、こんなことってありなのか…っ!?嘘だろうっ!?
つーかわけがわかんない、ちょっと待てちょっと待て!これ大体、…ファーストキスなんですけど!?
「ふぁあっ」
強引に絡められる舌に逃げることもできずに冬森先輩のペースにのまれ、俺は瞳を潤ました。
冬森先輩は目を開いたまま、近すぎる距離で俺を見てくる。
先輩の手が、俺のシャツを捲り上げるのを感じた。
「っあ!ふ、冬森先輩っっ、なにっ」
冷たい手が俺の筋肉のない腹を撫で、胸の突起に触れた。
指でこりこりと、乳首なんかを先輩にいじられ、羞恥が襲って頬が一気に赤らんだ。
「や…っ……先輩…っ、や、めて!」
耳まで真っ赤にして小声で叫ぶ。
でも先輩は、やめる気なんてさらさらなさそうで。
しまいには額にちゅっとキスをされて、ビクッとして過剰に反応してしまう俺。
「な、なにするんですかっっ!」
冬森先輩を見ると、真っ直ぐに俺を見つめていた。俺はそれに慌てたように目を逸らした。
ま、まさかそんな真っ直ぐ、見つめられているとは思わなかったんだよ…っ!
「東峰って可愛いな」
「はい!?」
内心絶叫していたら、冬森先輩がそんな変なことを言い出して、リアルでも声が出た。
つーかまじで意味わかんないし……っ!
何なのこの人ッ、何なの冬森先輩っっ!
「付き合ってるんだし、こういうこともするから」
「えっ」
「東峰無警戒過ぎるからさ、だから教えてやったの。次からは気をつけるように」
冬森先輩はスっと席を立ち上がった。
「バイト戻ろうか」
笑顔で声をかけてくる先輩に、俺は引きつり笑いで返事をする。
「はい……」
着崩れた服を片手でぎゅっと握りしめて、俺はまだ頭を白くさせていた。
今何が起きたんだ?俺、何されて……。付き合うって、そっか…ああいうこともするのか。
いや、それよりもまず、冬森先輩力強すぎっっ 全然振り解けなかったし…!
男同士ってどうするんだっけ。後ろに…あれを挿れるんだっけ……
む、無理無理無理っ!絶対無理!!
でも絶対立場的に俺の方が下だろうし……
くっそうう…っっ
俺はその夜、中々寝付けなかった。
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