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熱い体温、濡れる頬2

【東峰 春side】 「ん…っ、や……先輩…っ」 必死でシーツを、手で掴んだ。 先輩の手が俺の乳首をまた抓って、俺のモノを触って。 まるで現実味がない心地がした。 「東峰ダメ。体…丸くしないで」 冬森先輩の声を、唇を噛みながら、恥ずかしさから溢れ出る涙を流しながら聞いた。 「東峰。……いや?」 中々体勢を仰向けに戻そうとしない俺を見て、冬森先輩は少しだけ不安そうに言った。 …ムカつく。こんなふうにしといて、丸裸にしといて、死にそうになる程の羞恥心を俺に味あわせておいて。 先輩はいい人だって、重々分かってる。 嫉妬と、憧れと、ムカつく気持ちと、羞恥と、劣等感、優越感。 先輩に抱く気持ちは、あまりに沢山ありすぎて、…俺は分からなくなる。 「は…ぁ…っ」 先輩の手が、俺の先端を指でぐりぐりといじった。 今のこの感情は、何。 快楽。それだけで、いいんだよね。 それともこれは、先輩に触られるから、…気持ちいいのか? 「…ぁぁ…っ」 白濁の液が出ると共に、ぐちゃぐちゃになった整理のつかない頭の中を、真っ白にさせた。 ――先輩は俺とは違う。 住んでいる世界が違う。 何で、俺のこと… どうして、よりにもよってあなたが、俺を好きになるんですか……。 「東峰、ちょっと足開くな」 先輩の手にイカせられて、ぼうっと体を横たわらせていると、両足を開かされた。 そのまま足を持たれて、曲げたままぐっと、お尻の後ろを剥き出しにされるような形にされた。 なにこれ……恥ずかし過ぎ。 自分のイったばかりのモノが、目の前に見えた。 お尻越しに、先輩の端正な顔が見えた。 「せんぱ……」 「ナカ、慣らさないとな」 縋るような目で先輩を見たのに、先輩はそれだけ言って、俺の後ろに顔を埋めた。 自分でいじったことも勿論舐めたこともないそこを、突如ぬるりとした何かに刺激されて、体が緊張で強張った。 てか…先輩、何してんの? …何でそんなとこ、舐めてんの? 体がおかしい。先輩の舌が、中で蠢く。 先輩に体を、毒されていく。 「先輩…っっ、…やだっ!」 先輩にモノを擦られ、ナカを舐められ、俺は子どものように1人泣きながら声を上げた。 先輩はいつだって涼しい顔。 対して俺は、いつだって慌てたり、ミスしたり、こうして今みたいに、切羽詰まったり。 俺は先輩なんか好きじゃない、そんなわけがない。 …それなのに何で俺は、こんな恥ずかしい目に遭わないとならないんだろ。 感情が、急に昂ぶるのを感じた。 「指、入れるな」 俺は先輩に向かって後ろを剥き出しにしながら、瞳を潤ませ、唇を痛いほどに噛んだ。 先輩が、右手の中指を俺のナカに差し込む。 「嫌だっ!やっぱりイヤだ、こんなこと……っ!」 入り口に指が入って、俺は目を開き叫んだ。 もうどうでもよかった。 こんな痴態な格好をしていることもありえなかったけど、まだ我慢できたんだ。 でも、これからする行為の怖さは、我慢なんかで耐え切れるものじゃないと、悟った。 「先輩のをこんなところに挿れるなんて、……あり得ない。もう、やめて欲しいです…。先輩…」 ここまできて、結局弱音を吐く自分。 俺は本当に勝手。好きにしていいと言ったくせに、やっぱりできないと我が儘を言う。 だけど、 「無理」 え……? 顔を伏せる先輩に、俺は戸惑ったように瞳を揺らす。 「ごめん、…無理だ。今更、止められねえ」 先輩の指が、俺のナカ奥深くまで侵入した。 中に、先輩の指がある。 ……気持ち悪い。 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。 なにこれ、なにこれなにこれなにこれっ! 「きっつ…」 「せんぱ…っぅ、…いや、だっ 先輩……先ぱいっ」 「気持ちよくさせるから。東峰、ちょっとだけ、……耐えて」 先輩の優しい声は、何の励みにもならなかった。 中で未だ蠢く先輩の指に、額に汗が浮き、両手で必死でシーツを握りしめる。 耐えて……? 俺は何で、こんなことに耐えないとならないんだ。 俺は関係ない。 勝手に好きになったのは、先輩じゃないか。 …俺はなにも、なにも悪くない。 「せんぱ…いっ、先輩…、先輩…」 ムカつく。嫌い。先輩なんて…。 先輩なんて、――大嫌いだ。 降りしきる雨の音は、先ほどよりも激しさを増していた。

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