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第5話

「はい!お待たせ!行こっか?」 「はぁ!?何で僕がっ…」 抗議しようとしたら長い指で唇を塞がれた 「しーっ」 耳元であいつが言う 「一旦ここを離れないと目立っちゃってるよ?ね?大人しくしついてきて。人の目が少ないとこまで」 こいつの言う事は尤もだ。周りを見渡すと何だろうと変に囲まれてた。だから大人しくついていく事にした…けど言われるままは何だか腹が立つのであいつの腕に絡みついて上目遣いで見つめしなだれかかってみた 「うん!いこっか?」 「…っ!」 ちぇ…やっぱ動じるわけないかぁ…つまんない… こいつが驚いたのは一瞬だった。こいつはすぐに普通の人なら腰が砕けてしまいそうな思いっきり妖艶な笑みを僕に向けて腰を抱いた。 「ふふっ…かぁわいい!!行こう行こう!」 周りの人が目がハートになってるっぽいからやっぱコイツはすごい 腕を振り払われることもなく大人しく腕にぶら下げていてくれた。 人の間をすり抜けて幾つもの路地を抜けていっていつの間にか人通りの少ないところに辿り着いていた。 目の前には落ち着いた雰囲気の喫茶店があった 「よっし。ここまできたら平気かな?そういやもう彼氏くんとはバイバイしたの?門限かな?早いねぇ。小学生みたい!」 俺の横に彼がいないことが気になるのは当然かも知れない。 彼氏といたはずなのにさっきよくわからない男についていこうとしていたのも不思議だっただろう。 何となく悪いことをしてるみたいで顔を上げられなかった。 「あ…あの…えっと…美作…ありがと…」 誤魔化そうとしていることに気付いてるんだろうけどそこでは気付かないふりをしてくれた   「うん。なんかいつもの天使ちゃんじゃないなぁって気になっちゃった。らしくないぞぉ」 グリグリと頭を撫でてくれた。思ったよりずっと大きな手がなんだか優しかった 「えっと…あの…」 「…まだ時間大丈夫?」 「うん!」 「んじゃさ俺とお茶してこ?」 促されるまま目の前の喫茶店に入った。中はムーディーな音楽が流れてて落ち着いた大人な感じのお店だった。 「ここよく来るの?」 「うん!初めて!」 「そうなの?」 「まぁまぁ細かいことはいいじゃん!ね?」 こいつに何を言っても無駄かなぁなんて思いながら窓際の席に着く。 すぐお店のウェイターさんがやってきた。注文してないのに飲み物が置かれていく。指先の動きまで美しい彼にどこか既視感を覚えながら見入っていた。 ふとウェイターさんの眉間に皺が寄る。 「あのさ。ラフ…お前何で何にもならないしょーもない嘘を付くんだ…」 「ウソ?」 初めてきたという割にはこいつととても親しいような感じ。そんなウェイターさんが今度はため息をつく 「はぁ…あのねぇ…まぁいいけどさぁ。ラフは俺の弟なんだよ。俺はリエルだよ。ここの2階に住んでるんだ」 「そうなんですねぇ」 なるほど…それで何だか既視感があったんだな…よく見ればこいつと彼、雰囲気似てる 「嘘はついてないよ?店には俺降りてこないし。ここリエルが経営してるの。祖父さんに譲ってもらってね。」 いつもの調子で飄々と美作が言う 「そうなんだぁ…」 「君が噂の熾くんだよね。」 「噂?」 「うん。いっつもラフが話してたよ。君のこと。君の好きな飲み物や食べ物とかも教えてくれた。これ好きなんでしょ?」 確かに目の前に置かれていたのは僕が好きな飲み物だ。 「まぁ…ラフは面倒な奴かもだけど根は悪い奴じゃないから仲良くしてやってよ。じゃあごゆっくりね」

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