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第6話

リエルさんがカウンターで仕事を始めると美作がニヤニヤと笑顔を浮かべたまま向かいの席から僕の隣へ移動してきた。 再び人の頭を撫でながら真っ直ぐ僕と目を合わせ聞いてきた。その目からは逃れられない…諦めに似た感情もあった 「ねぇねぇ。天使ちゃん。彼氏くんどうしたのぉ?」 ニヤニヤしてるいつもの表情に何となくホッとした 「振られた」 「へ?」 さすがの美作もびっくりしたのか一瞬呆けた顔にになった。みんなに向ける綺麗な笑顔でも僕だけに向けるヘラヘラした顔でもないあまり見覚えがない表情だった。 「何で?」 「思ってたのと違うんだって」 「は?」 「偽物の天使だって。笑っちゃうよね。そもそも僕は天使じゃないっていうのに」 うまく笑えているだろうか?こいつには心配されたくない。 「好きな人と手を繋ぎたいって思っちゃだめだったかな?上目遣いでおねだりしたら…もう少し一緒にいたいって言ったら…お泊りしたいなって言ったら…みんな娼婦になっちゃうの? 好きだから…本当に好きだから…長く一緒に過ごしたいって思うのはそんなに悪いこと?」 天使は手を繋ぎたいって自分から手を伸ばしてくることはないらしい。 上目遣いなんてしないらしい… 媚びたような目をする訳ないんだって… 初デートでお泊りとか…天使は言わないんだって。 そんなの知らないし。 だって僕は天使じゃないし。会ったこともないんだし もしかするとさ天使でも節操ない奴いるかもしんないじゃん?あんたは会ったことあるの?その本物の天使様とやらに… 「「お前は偽物だ!もう話しかけないでくれ!終わりだ!」だってさ」 必死に笑顔を作ってさっき言われたことを吐き出した。 ねぇ…僕ね本当に好きだったんだよ?彼のこと…こんな風になるなんて…思ってなかったよ… 「天使ちゃん」 「何?」 もう一々天使のとこ否定するのもなんやかんや面倒なのでそのまま頷いた 「天使ちゃんじゃなくなっちゃえばいいんじゃん」 「うん。それは僕も思って。だから…」 「あのおっさんについていこうとしたの?」 「うん。胡散臭い汚いおっさんの方が汚してくれるかなぁって」 「ほうほう…なるほどねぇ。そうだなぁ…うん!…俺はめちゃめちゃ美人なお兄さんだけど俺と悪いことしちゃおっか?」 「え?」 こいつは何を言い出すんだ…それって美作に…えぇ…それはなんか…微妙じゃない?だってクラスメイトよ?学校で顔合わせるの恥ずくない?

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