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天使と王子 1
美作side
この学校には天使がいるらしい。
「天使…ねぇ…」
どんな人なんだろう?天使って呼ばれるってことは…やっぱ想像の天使みたいにキラキラしてるんだろうか?
俺と同じで自分を偽って生活しているんだろうか?
「気になるなぁ…」
噂というものは尾ひれがついて大げさになっていくもの。きっとその人もそうなんだろうな。
「美作くん!」
知らない生徒に呼ばれて作っているとはわからないだろう笑顔で振り返る
「どうしたの?」
相手が真っ赤になっている…。
あぁ…また告白か…
本当の中身を知りもしないで見た目と偽りの俺の姿にホイホイついてきたがるのウザいなぁ…そういうの面倒だから男子校を選んだのになぁ…結局どこにいても同じかぁ…いつか俺の本当の全部をひっくるめて好きになってくれる人現れないかなぁ…
昔から顔は整っている自覚があった。だって両親美形だし。兄なんて本当に絵本から飛び出してきた王子様そのものなんだもん。
その兄に似てる俺。そりゃ自覚だってするでしょ?周りからも言われるし。
俺の名前も兄の名前も天使にあやかってつけられたらしい。
この年齢になって背もぐんと伸びて筋肉も程よくついて多分絵本などで見る美しく強い王子みたいな見た目になったであろう俺はとにかくモテた。
とはいえ本来の俺は基本的に面倒くさがりだし、できればダラダラと制服も着崩してぼーっと過ごしていたい。
だけどそれはそれで周りの声がうるさい。みんなが望む王子様像でいた方が何倍も楽だからこうしているわけで。
モテはしても不特定多数とか特定の相手って作りたくないんだよね。
だって面倒でしょ?素の自分でいられない相手と一緒にいるってことはさプライベートでもこの偽りの自分で居続けないといけないってことだからさ。疲れるだけじゃん?
まぁおかげさまで見た目と違って真っ更なんですけど…手をつないだりキスしたり抱き合ったり勿論セックスだってしたことない…兄は見た目と違って俺より割と奔放で若い頃は不特定な相手が沢山いた。それにはまぁ理由があるのだけれど…
そんな兄曰く、あんなに気持ちのいいこと見た目利用してすればいいのに!勿体無い以外の何物でもない!だそうだ。
興味がないと言っちゃ嘘になるけどさ本当の自分自身をみてない相手とそんなことをするなんてストレスになりそう…
今俺が俺でいれる場所は自宅とバイト先くらいかな。
バイト先の店主が俺たちの幼馴染で兄のパートナーでものすごく厳つい見た目の男性だ。
並ぶと美女と野獣そのものだけどそれも含め兄は昔から溺愛してた。
まぁ相手が相手だけに思いは叶わないと諦めていたからこそその代わりに不特定多数の人といろいろしてきていたわけだが…
長年の思いがかなった今の兄を見ていると誰よりも大切な人と素のままの自分でいられるのがどれだけ幸せなのかなって羨ましくもあるわけで…
とはいえ…まだそんな相手とは出会えていないし…
「美作くん。好きです。付き合ってください!」
凄く勇気を出して一生懸命伝えてくれたのだろう…だけど…
「ありがとう。だけど俺は君のこと名前も知らないし存在も知らなかった。そういった意味で好きだと言われても答えてあげられない。ごめんね」
変に期待を持たせたほうが酷だと思うからはっきりとお断りを入れた。目の前の彼は涙を流しながらもしっかり俺を見据えて
「聞いてくれてありがとう」
そう笑った。その姿にびっくりする。これまで子たちはおいおい泣き続けるか気持ちはなくてもいいから一度でいいから抱いて欲しいとか言ってきたんだけど…この子…凄い潔いな…気持ちを伝えることって凄く凄くパワーがいると思う。特に同性だしたくさん葛藤したはずなんだ。きっとこの子に思われる人って素敵なんだろうな。彼にはすぐにいい人できそ。
「ごめんね。ありがとう」
俺もいつか真正面で気持ちを伝えられる相手と出会いたい…
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