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第24話

城山の(ふもと)、夜明け前の、まだ深い闇に包まれた広場に、二百近い人影が集まっていた。 屈強な体躯(たいく)の者ばかりではない。痩せた若者、着古した仕事着の男、中にはまだ少年と呼んでもいいような者も混じっている。その誰もが、一様に、ぎらついた目をしていた。 小雀(こがら)が集めた、かつての「猿飛衆(さるとびしゅう)」。そして、あの火事の後も、(じん)――「甚八(じんぱち)」の名を慕い、彼の帰りを信じて待っていた者たちだ。 誰もが口数は少なく、ただ一点、暗がりの中から現れるであろう頭目(かしら)の姿を、固唾(かたず)を飲んで待っていた。互いの荒い息遣いと、遠くで鳴く獣の声だけが、張り詰めた空気に響いている。 やがて、カサリ、と草を踏む音が近づき、一人の青年が姿を現した。 月光のような銀髪が、闇の中でも微かに光を放っている。その琥珀(こはく)色の瞳が、集まった者たちの顔をゆっくりと見渡した。 「よお。集まってんな、お前ら」 その、ぶっきらぼうで、しかし、どこか懐かしい声。 その声に、それまで息を潜めていた者たちが、(せき)を切ったように、一斉に沸き立った。 抜身のナイフのような険しい雰囲気を(まと)った者たちが、我先にと彼を取り囲む。 「甚八(じんぱち)だ!」 「(かしら)!」 「ちくしょう、生きてやがったか!」 「小雀(すけ)から聞いたぜ! 派手にやらかすんだろ! 信じて来てやったぞ!」 口々に、久しぶりに再会した頭目への、荒々しくも喜びに満ちた声が飛び交う。熱気が、闇を押し返すように渦巻く。 迅は、その熱気に押されながらも、片手を挙げて彼らを制した。 「待て待て、お前ら。落ち着け。…まずは、挨拶といこうじゃねえか」 迅は、ぐるりと、集まった二百の顔を見渡した。その琥珀色の瞳には、鋭さと、そして、心の底からの深い懐かしさが宿っていた。 朽木(くちき)の大軍が迫る中、自分の、たった一言の呼びかけに、命を懸けて応じてくれた者たち。かつて自分と同じように、誰にも見向きもされず、ただ生きるために牙を剥いてきた、同胞(どうほう)たち。 彼は、静かに息を吸い込み、これから始まる地獄への道行きを共にする彼らに向かって、その言葉を紡ぎ始めた。 「俺たちがこれから向かうのは、猿返しの峠だ。人一人、まともに通れねえような、険しい山道だ。道なき道を、命をすり減らして進む」 迅の声は、静かだった。しかし、その声には、有無を言わせぬ、絶対的な力が宿っていた。 「行く手を阻むのは、明家の大軍。奴らは、俺たちの、命を狙っている。目的地にたどり着くより前に、命を落とすかもしれねえ。それでも、俺は、ここにいるお前たちを、連れて行く」 彼の言葉に、若者たちは、静かに耳を傾ける。 「世の中は、てめえが信じたことこそが、すべてだ」 迅は、言い聞かせるように、言葉を続けた。その言葉は、彼自身が、その人生をかけて、選び抜いた、唯一の真実だった。 「俺は、俺が信じた道を進む。信じると決めたら、曲げねえ。この町も、俺たちが護ると決めた。だから、俺は、俺が信じたこの道を進む」 彼は、一瞬、言葉を切った。そして、その、琥珀色の瞳に、白く燃え盛る炎を宿らせ、力強く、叫んだ。 「俺を信じて、命を預けられる奴はいるか」 その言葉に、応えるように、若者たちが、一斉に、声を上げた。 「俺を、信じてついてこい! これから行く先は地獄だが、今いる地獄よりましな地獄をみせてやる!」 その声は、熱狂的な歓声となり、彼らの魂を揺さぶる。 「おおお!」 「猿飛衆! 猿飛衆!」 迅は、その、熱狂の中心で、ただ、静かに、そして、満足げに、笑みを浮かべていた。 (……あれが、猿飛衆) 物陰からその光景を眺めていた暁斗は、息を呑んだ。 朱鷺田が、調べた調書にも迅が甚八と呼ばれていて猿飛衆というごろつきの集団を束ねていることは書かれていた。だが、迅と彼らは暁斗と家臣たちとは全然違った。 そして、猿飛衆の前で士気を鼓舞した迅は、暁斗の知る迅ではなかった。 川辺で笑っていた無垢な子供でも、寝台でか細い息をしていた傷ついた雛鳥でもない。 そこに立っていたのは、二百の荒くれ者たちの魂を、その指先一つで従える、若き「王」の姿だった。 (今いる地獄よりましな地獄をみせてやる、だと…?) なんと傲慢で、それでいて、どうしようもなく心を惹きつける言葉だ。 あの者たちは、金や地位のために集まったのではない。迅という個人の、その剥き出しの魂の輝きに魅せられ、命を懸けようとしている。 見ろ。あの者たちの目を。 あれは、恐怖や義理で縛られた、城にいる家臣たちの目ではない。 王に、あるいは神に、自らの魂を喜んで捧げる、狂信者の目だ。 (迅……) 暁斗の胸を、焦がすような嫉妬が貫いた。 あの熱狂は、自分のものではない。あの笑顔は、自分に向けられたものではない。 自分が知らなかった七年間で、迅は、自分だけの国を、自分だけの忠実な臣下を、作り上げていた。 (お前は、ただの私の宝物ではなかったのだな) (お前は、お前自身の国の、王だったのか) だが、その嫉妬は、すぐに、より深く、より暗い独占欲へと変わっていく。 (……ならば、その国ごと、お前を、我がものとするまでだ) あの熱狂も、あの信頼も、あの魂の輝きも。 その全てを、この手の中に収める。 暁斗は、闇の中で、静かに唇の端を吊り上げた。 その紫の玻璃の瞳が、獲物を見つけた獣のように、ぎらりと光る。 (お前の全ては、私のものだ。その魂の、最後の一片まで、な) 「「「猿飛衆(さるとびしゅう)!! 猿飛衆!!」」」 二百の若者たちの雄叫びが、夜明け前の空気を震わせる。 その熱狂の中心で、迅は、久しぶりに心の底からの笑みを浮かべていた。一人ではなかった。自分を信じ、命を預けてくれる仲間が、ここにいる。 その、熱に浮かされたような高揚感の中。 人波をかき分けるようにして、輪の中心へと近づいてくる、二つの影があった。 一人は、熊のようにがっしりとした、見覚えのある大男。 そして、もう一人は―――。 「熊樫(くまがし)……友衛(ともえ)……?」 迅は、思わず目を見開いた。 裏社会に入ってから、親の言いつけで疎遠になっていた、かつての幼馴染。この、命懸けの戦の場に、いるはずのない二人だった。 先に口を開いたのは、熊樫だった。 彼は、その大きな瞳を太陽のように輝かせ、満面の笑みで叫んだ。 「(じん)! こんな大事な時に、水臭えじゃねえか! 俺も仲間に入れろよ!」 その、昔と少しも変わらない、真っ直ぐで、温かい言葉。 迅の胸に、熱いものがこみ上げてくる。自分勝手に姿を消した自分を、この親友は、今も変わらず、そう呼んでくれる。 「……当たり前だろ、馬鹿野郎」 潤む瞳を隠すように、迅は熊樫の分厚い胸を、拳で強く叩いた。もう、声が震えるのを抑えることはできなかった。 そんな二人の様子を、少し離れた場所から、友衛が静かに見つめていた。 迅は、友衛へと向き直り、少しだけ驚く。子供の頃は、自分よりずっと小さかったはずの、華奢な少年。それが今では、自分より僅かに背が伸び、その体つきも、しなやかな若者のものへと変わっていた。 「……友衛」 「迅……よかった。生きてて」 その、囁くような声と、真っ直ぐに自分へと注がれる、熱を帯びた視線。 それは、友情だけではない、別の感情の色が混じっていることに、迅は気づいていた。昔は気にもしなかったその熱が、今は、どこか肌を粟立たせる。どうしようもなく、目を逸らせなかった。 「……てめえら、なんでここに」 「小雀(こがら)が、教えてくれたんだ!」 熊樫が、輪の外に立つ小雀を指さす。 しかし、小雀は、この感動の再会に加わろうとはせず、ただ、冷たい目で、熊樫と友衛を値踏みするように眺めていた。 (……来たか。迅をつまらなくする男と、迅を汚そうとする男が) その、暗い呟きに、気づく者は誰もいない。 失われたはずの、陽だまりのような時間。 迅は、この束の間の奇跡に、ただ、心を震わせるしかなかった。 この温かい光を守るためならば、どんな地獄にだって、行ってやれる。 彼は、そう、強く誓った。  やがて、暁斗が、石動玄忠だけを連れて猿飛衆たちが集まるそこへ姿を現した。  彼は、迅が集めた異様な雰囲気の「軍勢」を一瞥し、そして、迅の隣に立つ熊樫と友衛へと視線を移す。  岩田友衛は、自分たちの前に現れた、この世のものとは思えぬほど美しい少年に、知らず息を呑んだ。月光を映える漆黒の髪に、雪のような白い肌。そして、全てを見透かすような、紫の玻璃の瞳。 その畏怖の目線には目もくれず、暁斗は熊樫を見た。 (熊樫(くまかし)太吉(たきち)。俺をばけものと呼び、迅のもとに案内するのを躊躇っていた男。その者の氣は素直だ。体は大きいが迅を害するものではない)  暁斗は、熊樫には何の興味も示さなかった。ただの、友。害のない存在。  だが、友衛の前に来た時、暁斗はふと足を止め、その紫の瞳をすっと細めた。 (岩田(いわた)友衛(ともえ)。迅が名で呼ぶのは姓が「岩田」だからだ。そしてこいつは迅を慕っている。俺と同じように……) 友衛が迅に向ける視線に、ただの友情ではない、仄暗い熱が混じっているのを、瞬時に見抜いたのだ。  次の瞬間、暁斗は驚くほど自然な仕草で、迅の隣に並ぶと、その腰をそっと抱き寄せた。自分より少しだけ背の高い迅の体に、華奢な腕が回される。 「っ……!?」 仲間たちの前で雄々しくありたい迅が、驚いて半歩身を引く。だが、暁斗の細い指は食い込むように腰を掴んでそれを許さない。それは腕力ではなく、逆らうこと自体を考えさせない、王の意志の重みだった。 そして、友衛だけに見えるように、その唇に、残酷なまでに優美な、優越を滲ませた笑みを浮かべる。 ―――これは、私のものだ、と。 岩田友衛はこの中で唯一、迅の腰を抱き寄せた暁斗の目線と笑みを正面から目撃した。  その、王の無言の宣告を、友衛は正確に理解した。迅が、この美しい王の「寵愛」を受けている。その意味を。そして、友衛の心に宿ったのは、絶望ではなかった。 (……ああ、そうか。迅は……) (男を受け入れることに、抵抗がないのかもしれない) (ならば──) (ならば、俺にも届く、隙があるかもしれない)  友衛の瞳の奥で、暁斗とはまた違う、暗く、粘ついた光が灯った。その変化を、小雀が見ていたことに、暁斗は気づいていた。 暁斗は小雀を見る。 (小雀(こがら)助六(すけろく)。あの河原で遊んだ子供のうち、ずっと迅の傍にいた、迅の腹心) 「小雀、お前に頼みがある」 「この戦で、お前はお前の信じる者とともに、迅を守れ。片時も迅から離れるな。もし離れるときは必ず代わりの者を付け、決して一人にするな」  東の空が、血のように燃え始めている。出陣の刻は、目前に迫っていた。 夜明けの光が、東の山を白ませ始めた頃。 城山の麓に集った猿飛衆は、それぞれが出陣の支度を始めていた。しかし、それは正規軍のそれとは似ても似つかない。ある者は刃を入念に研ぎ、ある者は仲間と軽口を叩きながら干し肉を分け合う。規律とは無縁の、雑然とした、しかし、妙な活気に満ちた光景だった。 石動玄忠は、その光景を、少し離れた場所から、苦々しい思いで眺めていた。 (……なんだ、この有様は。まるで、ごろつきの集会ではないか) 隊列もなければ、統一された装備もない。あれが、これから二万の敵軍に奇襲をかける部隊だとは、到底信じられなかった。 彼の視線が、その中心で仲間と笑い合っている、銀髪の少年――神月迅へと注がれる。 (あの男に、本当に、御君の命を預けられるのか…?) 玄忠は、意を決して迅へと歩み寄った。 「―――神月殿」 その、硬質な声に、迅はゆっくりと振り返る。 「なんだよ、お坊ちゃん。もう出発だぜ」 「玄忠だ。出立のことは分かっている。その前に、一つ問いたい」 玄忠は、周囲の荒くれ者たちを侮蔑するように一瞥し、言った。 「あなたの部隊を見させてもらったが、規律もなければ、士気も低い。まるで烏合の衆だ。そのような者たちを率いて、本当にこの作戦を成功させられると、本気で思っているのか」 それは、彼の「優等生」としてのプライドから来る、純粋な疑問であり、そして、「ライバル」としての、剥き出しの挑発だった。 しかし、迅は、その言葉に怒るでもなく、むしろ、ふっと口の端を吊り上げた。 「規律? 士気? そんなもんは、腹の足しにもならねえよ」 「何だと?」 「こいつらはな、生まれた時から、毎日が戦なんだよ。腹が減っても戦い、誰かに絡まれても戦う。生きるために、毎日戦ってんだ。今更、士気だの規律だの言われる必要もねえ。それに…」 迅は、玄忠の、見事に磨き上げられた鎧の肩当てを、トン、と指で叩いた。 「そんな、ピカピカの鎧と、お綺麗なだけの剣術が、道なき山の闇の中で、何の役に立つ?」 「……!」 「俺たちは、闇の中での戦い方を知ってる。俺の仲間を信じてる。それ以上、何がいる?」 それは、あまりにも真っ直ぐな、裏社会を生き抜いてきた者だけが持つ、実践の論理だった。玄忠は、言葉に詰まる。 迅は、そんな彼に、追い打ちをかけるように言った。 「あんたの仕事は、暁斗を守ること。俺の仕事は、この作戦を成功させることだ。互いの仕事の邪魔だけは、するんじゃねえぞ。―――お坊ちゃん」 「……玄忠だ」 玄忠は、低く、怒りを抑え込んだ声で返す。迅は、それを鼻で笑うように無視して、仲間たちの輪に戻っていく。 残された玄忠は、その場に立ち尽くし、生まれて初めて味わう屈辱に、唇を固く噛み締めていた。 だが、迅の「授業」は、まだ終わっていなかった。 彼は、仲間たちに向かって声を張り上げる。 「てめえら、よく聞け! これから俺たちがやる相手は、ああいう、ちゃんとした鎧を着た連中だ。闇雲に刃物を突きたてても、弾かれるだけだぞ」 猿飛衆の若者たちが、興味深そうに迅の周りに集まってくる。 「じゃあ、どうすんだよ、甚八!」 「いい質問だ。―――おい、お坊ちゃん、ちょっとこっち来い」 迅が、手招きしたのは、まだ悔しさに顔を強張らせている玄忠だった。 玄忠は、侮辱的な呼び名に一瞬眉をひそめるが、指揮官である迅の命令を、衆目の前で無視するわけにもいかない。 「……玄忠だと言っている」 不承不承、彼は、猿飛衆の輪の中心へと歩み寄った。その声は、怒りよりも、冷たい響きを帯びている。迅は、その反論を聞き流す。 「そこに、突っ立ってろ」 迅はそう言うと、玄忠の隣に立ち、彼の体を、まるで教材のように扱い始めた。 「いいか、鎧ってのは、こういう繋ぎ目が一番脆い」 迅は、棒切れで、玄忠の鎧の脇の下や、首の付け根を、コン、コン、と叩いてみせる。玄忠は、微動だにせず、その屈辱に耐えていた。 「狙うのは、首、脇、股、膝の裏。分かったな。そんな睨むなよ。暁斗の鎧で教えるわけいかねえし。 少しは役に立て」 その、あまりにも当然、かつ、辛辣な言葉に、玄忠は返す言葉もない。 一通りの説明を終えると、迅は満足げに頷き、玄忠の肩を、馴れ馴れしくパン、と叩いた。 「よし、分かったか? 実物見ないと分かんねえからな。助かったぜ、あんがとな」 その、悪戯が成功した子供のような、茶目っ気たっぷりの笑顔。 それは、計算され尽くした、相手の毒気を抜くための、最高の武器だった。 その、悪戯が成功した子供のような、茶目っ気たっぷりの笑顔。 迅が仲間たちの方へ向き直り、玄忠に背を向けた、その瞬間。 「―――玄忠だ」 氷のように冷たく、静かな声が、迅の背中に突き刺さった。 振り返った迅が見たのは、怒りではなく、闘志の炎を宿した、涼やかな瞳だった。 「俺の名は、石動玄忠。次からは、そう呼べ」 それは、王の近衛として、そして、石動家の嫡孫として、彼が守り抜いてきた、最後のプライドだった。 迅は、その真っ直ぐな視線を受け止め、一瞬きょとんとした後、初めて、悪戯っぽく、にやりと笑った。 「へえ。でも、俺ぁ、まだあんたの名前を呼ぶほど、親しくなったつもりはねえんだけどな」 「何…?」 「はいはい、分かったよ。じゃあ、これからはそう呼んでやる」 迅はそう言うと、わざとらしく、かしこまった仕草で、こう続けた。 「―――石動坊っちゃん、な」 「き、貴様…!」 今度こそ、玄忠の涼やかな表情が、屈辱に赤く染まる。 迅は、その様子を満足げに眺めると、「じゃあな」と軽く手を振り、今度こそ、仲間たちの輪の中へと消えていった。 残された玄忠の拳が、ぎり、と強く握りしめられる。 この日から、「石動坊っちゃん」は、神月迅と、石動玄忠の二人だけが知る、戦いの始まりの合言葉となった。 屈辱に耐える玄忠の背後から、静かな声がかけられた。 「―――玄忠」 振り返ると、そこには、いつの間にか暁斗が立っていた。彼の紫の玻璃の瞳は、迅たちが消えていった闇を、静かに見つめている。 「気にするな」 「……滅相もございません」 玄忠は、慌てて膝をつき、頭を垂れる。 暁斗は、そんな彼に、視線を移さぬまま、静かに続けた。 「あれが、迅のやり方だ。……そして、此度の戦は、そなたが学んできた兵法とは、全く違うものになるだろう」 「……」 「そなたの役目は、ただ一つ。何があっても、余の傍を離れるな。余の盾となれ。それだけでよい」 「御意」 それは、慰めでも、気遣いでもなかった。 ただ、王が、自らの近衛に、その役割を再確認させる、冷徹な命令。 玄忠は、改めて、自らの主君の、そして、あの神月迅という男の、底知れなさを肌で感じていた。

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