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 男のスイートには海を眺められるジャグジーがあったが、男は水遊びで前戯といったまどろっこしいことはしなかった。 「どんなプレイをしたい?」 「……できれば口数は少ない方がいい」 「そうか? 私はおしゃべりすぎたかな」  男は無造作に服を脱ぐ。若くはないがまんべんなく筋肉がついた、鍛えられた肉体だ。男は無意識に唾を飲みこんだ遠夜の反応を面白そうに見た。 「そそられているな? きみもなかなかのものだ」  服を脱ぎかけた遠夜の手を止めて、男は遠夜の正面に立ち、密着しながら一枚ずつ服をはぎとっていく。そんな趣味ならそれでもいいと、遠夜はなすがままになる。男の股間ではすでに陽物がそそり立ち、遠夜のさらけ出された肌に擦れては離れる。それだけで遠夜自身も興奮しはじめ、気づくと手と唇と舌でみずから男の肌をまさぐり、おのれの欲望を擦りつけていた。 「いいな。すまし顔で仕えているきみのこんな顔は」  男がささやいた。 「……ずっと彼女に仕えているわけじゃない」 「関係ないさ。パーティできみに流し目を送っていた人間が何人いたと思う? うら若きご婦人から私のような男まで、きみはずっと知らん顔だ。ずいぶんとそそられた」 「口数は少ない方がいいといったのに……ぁ……」 「そうだな……ああ……いい……」  遠夜は男に導かれるまま壁に手を突く。ローションが肌を濡らし、中にゆっくりと男の欲望が押し入ってくる。そのまま受けとめて腰を揺すると、濡れた肌が淫靡な水音を立てた。男の尖端が中の敏感な部分に触れたとたん、火花のような快楽が飛ぶ。 「あっ、ああっ……んっ、あっ――」 「いい、いいぞ……ほら、もっと……」  男はさらに腰を進め、遠夜の体は太い欲望を奥まで咥えこんだ。今度は波のような快楽がはじまり、男がゆっくり腰を動かすしはじめると、遠夜の膝はがくがくと震えはじめる。 「あん、奥――」  パンパン、と奥へ打ちつけられ、喉の奥から声が漏れる。衝撃に喘いだ遠夜の腰を抱えたまま男は一度動きを止めたが、一度体を話したと思うと、思いがけないほど強い力でベッドに誘った。遠夜はスイートルームの大きなベッドに倒れ込み、仰向けになって両足をひらく。男は遠夜の足を持ち上げると、正面から中に入って奥深くまでつながった。 「ああああ――――」  寄せては返す快感の波の先には長い絶頂が待っている。喘ぎながら薄く目をあけても、快楽でかすんだ視界には自分を抱く男の顔はうつらない。  ふたたび目を閉じたとき、まぶたの裏にみえたのは彼ら――大神とクリスのまなざしだった。別の男に抱かれている自分を見ているのだ。羞恥の感覚が遠夜を震わせ、それはまたも快楽に変換される。 「陸のことは忘れていい」と男がささやいた。「私たちはどうせ、海の泡になる……」

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