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第9話 俺様に振り回される?日々

side 陸 あの後、「家まで送るよ」って言われたカイトに住所を教える羽目になった。 そして翌日から……。 カイトは休みの前日や暇な日は必ず俺の家に来て、一緒に過ごすようになった。 最初は戸惑ったけれど、今ではもう慣れてしまった。 カイトがいない日の方が、なんとなく物足りなく感じるくらいに。 「陸、おはよ」 今日も朝からカイトがやってきた。 俺がまだパジャマ姿でいると、勝手に冷蔵庫を開けて中身をチェックしている。 「何やってんだよ……」 「朝飯作ってやろうかと思って。でも何もないじゃん」 「一人暮らしだからそんなに食材ないんだよ」 カイトは呆れたような顔をしながら、俺の額に手を当てる。 「熱はないな。ちゃんと食ってるのか?」 「食ってるよ。コンビニ弁当とかで」 「ダメだろ、そんなの」 そう言いながら、カイトは俺の手を引いて外に出ようとする。 「ちょっと待てよ、俺まだ着替えて……」 「いいから。近所のコンビニ行くだけだし」 結局、パジャマの上にパーカーを羽織って、カイトと一緒にコンビニへ。カイトは慣れた様子で食材を選んでいく。 「お前、料理できるのか?」 「基本的なことならな。一人暮らし長いから」 意外だった。ホストって外食ばかりのイメージがあったから。 「へぇ……」 「何その反応。失礼だな」 カイトは少し拗ねたような顔をする。その表情が子供っぽくて、思わず笑ってしまった。 「笑うなよ」 「ごめん。でも意外で」 「俺だって普通の人間だからな」 家に戻ると、カイトは手慣れた様子でキッチンに立つ。 「俺も手伝う。何すればいい?」 「じゃあ、野菜切って」 並んでキッチンに立つのは新鮮だった。 カイトの横顔を見ながら、なんとなく温かい気持ちになる。 「……うまい」 カイトが作った朝食は思った以上に美味しかった。 「当たり前だろ。誰だと思ってるんだ」 「でも……ありがとな」 素直にお礼を言うと、カイトは少し照れたような顔をした。 「……お前のためだからな」 そんなことを言いながら、カイトは俺の茶碗にご飯を追加でよそってくれる。 「そういえば、カイトって休みの日はいつもここにいるけど、他に予定とかないの?」 「ないよ。あってもキャンセルする」 「なんで?」 「お前と一緒にいたいから」 さらっと言われて、心臓が跳ねる。 「……そういうこと、簡単に言うなよ」 「事実だからな」 カイトは当然といった顔で答える。その自信満々な態度に、またドキドキしてしまう。 「今日はどうする? 出かける?」 「どこ行くんだよ」 「お前の好きなところ」 「俺の好きなところって……」 考えてみると、特にない。 いつも仕事と家の往復だから、休日に出かけることもあまりない。 「本屋とか……?」 「本屋か。いいじゃん」 カイトはにっこり笑って頷く。そんな些細なことでも嬉しそうにしてくれるのが、なんだか嬉しかった。 本屋では、カイトは俺が本を選んでいる間、ずっと隣にいた。時々、俺が手に取った本を覗き込んできて、距離が近くてドキドキする。 「難しそうな本読むんだな」 「仕事関係だから」 「休みの日まで勉強か。真面目だよな」 カイトがそう言って、俺の頭を軽く撫でる。人前だから恥ずかしくて、慌てて振り払った。 「やめろよ、外だぞ」 「いいじゃん。恋人同士なんだから」 そう言いながら、カイトは俺の手を握る。温かい手に包まれて、なぜか安心する。 こうやって過ごしていると、本当の恋人同士みたいだ。でも、これは契約だから。そう思うと、少し切ない気持ちになった。 でも……嫌じゃない。むしろ、カイトと一緒にいると心が軽くなる。こんな関係も悪くないのかもしれない。

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