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第11話 愛という名の独占欲と依存

スマホに着信が入った瞬間、カイトは俺の腕を軽く掴んで、自分の方に引き寄せた。 「誰だよ」 「後輩……」 「またそいつかよ」 「ちょっと用事があって」 「ふーん、電話出るの?」 その顔は、いつも以上に自信たっぷりで、無邪気に俺を掌握するような笑みを浮かべている。 「俺の可愛い彼女が、他の男と話すところなんて見たくない」 「は……?」 思わず息を詰めて視線を逸らす。でもカイトは腕を離さず、俺の手を握ったまま微笑む。 「電話は後でいい。俺がそばにいるんだから」 なんでだよ。てゆーか、こんなの動揺するに決まってる。 俺の心も体も、勝手に反応する。指先で握られた手の温もりが妙に落ち着かなくて、でも安心もする。 「……あのさ、電話」 「ダメ」 低くて、でも甘さもある声。抗うことなんてできるわけない。俺はただ頷くしかなかった。 カイトは満足そうに笑って、俺の頬に手を軽く触れる。 「俺の横にいるときは、俺のことだけ考えてればいいんだよ」 余裕たっぷりで支配的……完全に翻弄されてる。 カイトは腕を組み直して俺の肩にかけた。 「ほら、スマホなんか置いとけ。俺と話してるほうが楽しいだろ?」 「……そうだけどさ……」 言葉では答えるけど、心臓がバクバクで隠せない。何されても不思議と嫌じゃない。 むしろ胸が落ち着かなくて、刺激的すぎる。 「陸、こうやって俺の隣にいると、誰のことも考えられなくなるだろ?」 「……う、うん」 素直に答えてしまった。 カイトはそんな反応も楽しむように、にやりと笑う。 「いい子だな……俺の横で素直に頷くなんて」 その笑みは、完全に俺の心をかき乱す。 カイトは俺を見つめながら、ゆっくりとソファーに深く座り込んだ。 「今度からは、俺がいるときに他の男から電話がかかってきても出るなよ」 「でも、仕事の……」 「仕事?」 カイトの眉がわずかに上がる。その表情だけで、俺は反論を諦めそうになった。 「仕事なら俺が判断してやるよ。お前は俺に任せてればいいんだよ」 そう言いながら、カイトは俺の髪をそっと撫でる。その優しい動作とは裏腹に、完全に俺を所有しているという確信に満ちた表情だった。 俺はもう、カイトの言葉に逆らえなくなっていた。 でも不思議と、それが嫌じゃなかった。むしろカイトに管理されることで、変な安心感があった。 他の人のことを考える必要がない。カイトが決めてくれるから、俺は何も悩まなくていい。 そんな依存的な自分に気づいて、少し怖くなった。 「カイト……」 「なに?」 「俺、変じゃないか?」 正直に言うと、カイトは少し驚いたような顔をした。 「どういう意味?」 「お前に言われると、何でも従ってしまう。でも嫌じゃない。これって普通じゃないよな」 カイトは少し考えてから、俺の手をもっと強く握った。 「変じゃないよ。陸は俺のものなんだから、俺の言うこと聞くのは自然なことだろ」 カイトの声は優しかったけれど、その瞳には強い所有欲が宿っていた。 俺は自分の気持ちが分からなくなった。 これは愛情なのか、それとも単なる依存なのか。 でも一つだけ確実なのは、カイトがいない生活なんて考えられないってことだった。

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