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第14話 不器用な愛の形

side カイト 俺は恋人ごっこじゃなくて、お前に本気になってたんだよ。 俺以外の奴とどうこうなるなんて、絶対に許さない。 「陸、お前は俺のものってこと、忘れんなよ?」 「は?」 陸に釘を刺す。あの事件があってから、俺の中で何かが変わった。 陸を失いそうになった恐怖が、俺をより強く陸を求めるようにさせた。 「わかった? 簡単に他人について行かないこと」 「子供じゃねぇし! それに、カイトのものってなんだよ、俺はお前の持ち物じゃないから」 「いや、俺のだよ」 これは本気で言ってる。冗談じゃない。 「違うだろ、俺は……」 「いいじゃん、俺が彼氏なんだし俺のものだよ。ちゃんと大切にするから」 「おい、人の話聞けよ」 陸はブツブツ文句を言ってるけど、そんなの知らない。俺に選ばれたのが悪いんだよ、諦めな。 ていうかさ、自分でも信じられない。 この“俺様ホスト”なんて言われてる俺が、こんなに好きになっちゃうなんて……。 ぶっちゃけ俺はモテる。この仕事をしているのに、女の子から本気で恋をされたり、客からすごい金額を注ぎ込まれたりする。 でも全部、仕事だった。心が動いたことなんて一度もなかった。 ……陸は違う。 陸だってモテるんだよな。本人は気づいているのか気づいていないのか……。 陸の場合はルックスが良いのもあるけど、仕事ができて頼れるうえ、優しいところが人気の理由だと思う。 だから先輩、後輩、同僚……特に今回みたいに男に狙われちゃって。そっちの方がよっぽど危険じゃないか? 「陸はさ、警戒心が足りないから気をつけろよ」 「なんだよそれ」 「これから誘いがあった時は、必ず俺に連絡しろよ」 これは本当に心配してるんだ。あんな目に遭わせるわけにはいかない。 「いちいちカイトに全部報告しなきゃいけねえの?」 「当たり前じゃん、危ないからな」 「なあ、俺に自由はないのかよ」 「ないよ、そんなの」 即答した。自分でも驚くほど迷いがなかった。 「マジで嫌なんだけど」 陸はそう言うけど、俺には分かる。本当に嫌だったら、もっと強く抵抗するはずだ。 どこか安心してる部分もあるんじゃないか? 「嫌でも我慢しろよ。俺がお前を守るから」 「守るって……」 「俺以外の奴に取られるくらいなら、家に閉じ込めておく方がマシだ」 我ながら行き過ぎた発言だと思うけど、本音だった。 「カイト、お前……本当に俺のこと好きなのか?」 陸が急に真面目な顔で聞いてきた。 「当たり前だろ。今さら何言ってんだよ」 「でも……こんなに束縛するのって、好きっていうより独占欲じゃないのか?」 図星を突かれて、少し黙った。 確かに俺の気持ちには独占欲も混じってる。でもそれだけじゃない。 「独占欲も愛情の一部だろ。俺がお前を手放したくないのは事実だから」 「それって……」 「愛してるってことだよ」 恥ずかしくて顔を逸らしながら言った。 こんなこと、ホストやってて客に言ったことはあっても、本心で言うのは初めてだった。 陸の顔が赤くなる。可愛い。 「……俺も、カイトのことは嫌いじゃねえし」 小さな声でそう言う陸を見て、胸が熱くなった。 でも同時に、この気持ちをどう表現していいか分からなかった。 愛することを知らなかった俺には、守ることしかできないのかもしれない。 「でもな、陸。俺の愛し方は普通じゃないかもしれない」 「どういう意味?」 「お前のことが好きすぎて、時々怖くなるんだ。失うのが怖くて、束縛したくなる」 正直に言うと、陸は少し考えてから答えた。 「……それでも、カイトの気持ちは嬉しいよ。ただ、あんまり極端なのは困るけど」 「約束する。お前が嫌がることはしない」 陸が俺のそばにいてくれるなら、俺も変わろうと思えた。 ――愛するってこういうことなのかもしれない。

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