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第15話 甘い夜、苦い朝
side 陸
朝、起きたら隣にイケメンが寝ていてびっくりする。いや、分かってたけど、まだ慣れない……。
まぁ、カイトのことは嫌いじゃない。
ただ、こいつが束縛系彼氏っていうのが微妙に納得いかないけど。
“俺様カイト様”だから、俺を支配するし、言うこと聞けって言う。この先も何を求められるかわからない。
寝ているカイトをじっと見つめる。
……きれいな顔してるよな。
この顔で優しく笑って、いい声で囁いて。そりゃ惚れるよな、女の子。
そうだ、最初にカイトを見た時は女の子にビンタされてたな。さすがにあれは衝撃だった……。
そっと頬に手のひらを当ててみる。
「……キスくらいしてくれてもいいのに」
「うわ!」
寝ているはずのカイトから声がして、ドキッとした。
起きてたのかよ……。
引っ込めようとした手は掴まれて、嬉しそうに俺を見つめるカイト。
「陸さぁ……、なんで俺のことずっと見てたんだよ」
まだ眠いのか、喋り方がふわふわしている。
「いや別に。なあカイト、もう少し寝れば?夜は仕事だろ」
「今、何時……?」
「朝10時くらいだけど」
「んー……起きる……陸と過ごしたい……」
カイトは俺の腰を抱いて、ふふっと笑う。
吐息が思いがけず近くてドキッとした。
「カイト、近い……離れろって……」
「可愛いな……」
その時、カイトのスマホから通知音が鳴った。
「……ん、誰だろ……?」
眠そうにスマホに手を伸ばしたカイトは、画面を見た瞬間、ガバッと起き上がった。
その後、メッセージを読んで優しい顔でふっと笑ったのを、俺は見逃さなかった。
「ちょっと電話するから……待ってて」
カイトは俺の頭をぽんぽんと撫でて、スマホを持って部屋から出て行った。
なんとなく嫌な予感がする。良くないのは分かっているけど、俺も静かにリビングに向かった。
入口で立ち止まった時、聞こえてきたのは。
「何年ぶりだよ、こっちに来てるなら連絡しろよな。いや、俺も会いたかったのにさ……お前がなかなか連絡してこないからじゃん」
相手は……誰だ……?
「あはは、なんでだよ。大事に思ってるって。お前のこと忘れた日なんてないよ」
優しい声。相手は客じゃなさそう。
カイトは客とはこんな親しげに話さない。しかも休みの日の朝から……。
メッセージを見た時の柔らかい笑顔と、楽しそうに話す声に、胸がぎゅっと締め付けられた。
カイトにも過去があるし、俺の知らない人間関係だって当然ある。
なのに、あんな声を聞かされると――なんだかいい気がしない。
カイトの人間関係も気になるし、自分がどういう立場にいるのかも分からない。
でも一つだけ確実なのは、俺はカイトの色んなことがもっと知りたくなったってことだった。
そして……少しだけ不安になった。
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