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第19話 嫉妬って、こんなに可愛いのか
腕の中で、陸がゆっくりと目を開けた。
至近距離で見つめ返してくるその瞳に、俺は思わず表情を緩める。
「陸、あのさ」
「何……」
声がかすれてる。可愛い。
言葉を選びながらも、どうしても伝えたくて口にした。
「俺と一緒にいたくないって言うなら……もう来ないし、会わない。でもこれだけは忘れないでほしいんだよ。俺は……」
頭を抱き寄せ、耳元へ口を寄せる。
「お前が本当に好きだから」
囁いた瞬間、陸の体がピクリと震えるのが分かった。
胸が熱くなる。抑えられない。
「どれだけ自分勝手だと言われても、俺は陸が好きなんだよ。俺、興味を持ったらそれしか見えない奴だから」
「離せってば……」
「嫌だよ、離さない」
顔を上げさせ、唇を奪う。角度を変えて何度も重ね、下唇を甘く噛む。
抗議しようとした声を、舌を差し入れて塞いだ。息が荒くなる。
離した時には、陸の体が力なく俺に預けられていた。俺は強く抱きしめ支える。
「っ……、なんなんだよ。お前、本命いるくせに!」
「え……本命? まて、なにそれ」
「だから、今日お前、本命の子とデートしてただろ!」
――は? デート?
思わず眉をひそめる。最近は客とそんなことも……いや、まさか。
「あ!」
一瞬で思い当たる。途端に、こらえきれず笑みが浮かんだ。
「なに……」
「ふは、」
堪えきれず、陸の唇に軽くキスを落とす。
抗議の顔も、真っ赤な頬も、全部可愛すぎる。
髪を指先で弄りながら、意地悪く口にする。
「今日デートしてた相手、あれ、妹な」
「妹?」
陸の目が大きく見開かれる。驚いた顔も可愛い。
「久しぶりにこっちに来てたらしくてさぁ、会いたいって言い出して」
「じゃあ、あのメッセージと電話は」
「うん、あれも妹。あいつ甘えん坊だし、構ってちゃんなんだよ。妹の彼氏が遠距離だから余計に」
事情を話すと、陸は俯いたまま固まっている。
……勘違いか。しかも、嫉妬して。
頭をポンポンと叩いてやる。
「ヤキモチ妬いた?」
「……そんなことない」
「妬いたんだろ?」
「……うん」
素直に認める陸が愛おしくて、思わず強く抱きしめてしまう。
「かわいいね、最高なんだけど」
本当に、こいつは俺の予想を上回ってくる。
まさか妹のことで嫉妬するなんて思わなかった。
でも、それだけ俺のことを真剣に考えてくれてるってことだよな。
「陸、今度妹に会わせるよ」
「え?」
「紹介したいんだ。『お兄ちゃんの恋人』として」
陸の顔が真っ赤になる。
「まだ付き合ってるかどうかも……」
「付き合ってるに決まってるじゃん。俺がそう決めたから」
強引なのはわかってる。でも、これが俺のやり方だ。
陸を手放すつもりは、最初からなかったんだから。
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