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第20話 素直になれない夜に

side 陸 あれから一週間。 最近、カイトとゆっくり過ごせていなかった。 あいつはホスト。俺は普通の会社員。生活リズムが違うのはわかってる。 それでも休みの前日や空いている時間は、どちらかの家で一緒にいることが多かった。 けど、この一週間はずっと客とのアフターや店外デート……。 わかってる。仕事だから仕方ない。売れっ子ホストなんだから。 “忙しくて、なかなか陸との時間が作れない” カイトはそう言ってたけど、俺の方がよっぽど寂しい思いをしてる。 俺には“他の奴と遊ぶな”だの制限ばっかりで、自分は客と楽しくやってるんだろう。 だから今日は先輩たちに誘われた飲み会に参加した。 別に意地を張ったわけじゃない。……多分。 くだらないゲームの罰ゲームでキスされたりとかはあったけど、正直どうでもよかった。ふざけて頬にされただけだし。 「お前は俺の恋人だろ。だから他の奴に触られるのは嫌なんだ」 「……別に恋人って決めた覚えないし」 そう言いながらも、顔が熱くなってるのがわかる。 「俺が決めた」 「勝手に決めるなよ」 でも、嫌じゃない。そんな自分が恥ずかしくて、視線を逸らす。 「お前を離すつもりなんかねぇから」 その言葉に胸の奥が温かくなった。 でも素直じゃない俺は、カイトから距離をとる。 「……知らねぇ。シャワー浴びる」 立ち上がってバスルームに逃げ込む。鏡に映る自分の顔が真っ赤で情けない。 冷たい水で顔を洗いながら考える。 カイトは本当に俺のことを大切に思ってくれてるんだろう。 まあ、ただの独占欲に見えなくもないけど。 でもあんな真剣な顔で見つめられると……。 「バカだな、俺」 シャワーを浴びて、気持ちを落ち着かせる。でも胸の鼓動はなかなか収まらない。 バスルームから出ると、カイトがベッドに座って待っていた。 「……もう寝る」 「陸、ちょっと話そうよ」 「話すことなんかない」 「あるよ。俺、ちゃんと説明したいことがあるんだ」 カイトが珍しく真面目な顔をしている。でも今は素直に話を聞く気分じゃない。 「明日にして」 ベッドに潜り込んで布団を被る。 「陸……」 カイトの声が聞こえるけど、返事をしない。 しばらくして、隣にカイトが横になる気配がした。腕を回されて、背中に体温を感じる。 「怒ってる?」 「……別に」 「嘘だ。俺のせいで寂しい思いさせたよな」 図星を突かれて、体が強張る。 「別に寂しくなんか……」 「嘘つくなって。俺も寂しかったよ。陸に会えなくて」 耳元で囁かれて、心臓がまた跳ねる。 「だから明日は一日中一緒にいよう。どこか行きたいところある?」 「……別に、どこでもいい」 そう答えながらも、内心では嬉しくて仕方ない。 「じゃあ俺が決める。陸の好きそうな場所」 「……勝手にしろ」 強がってるけど、もうカイトにはバレてるんだろうな。 「おやすみ、陸」 「……おやすみ」 抱きしめられながら眠りにつく。 素直になれない自分が嫌になるけど、こうしてカイトがそばにいてくれるだけで安心する。 明日はちゃんと話そう。そう思いながら、意識が遠のいていった。​​​​​​​​​​​​​​​​

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