24 / 30
第24話 甘え下手の恋模様
付き合うことになって数週間。
でも正直、何が変わったのかよくわからない。
「陸、おはよう」
朝、カイトが俺のマンションで目を覚ます。最近、泊まっていくことが多い。
「おはよう」
素っ気なく答えて、キッチンに向かう。朝食の準備をしていると、後ろから抱きしめられた。
「陸、つれないじゃん」
「別につれなくない」
「恋人なんだから、もっと甘えろよ」
「……甘えるとか、ガラじゃねぇし」
振り返ると、カイトがいつもの自信満々な顔をしている。
「お前さ、もしかして恋人らしいことするの慣れてない?」
「慣れてるよ。普通に付き合ったこともあるし」
「じゃあなんで素っ気ないんだよ」
「……お前が調子乗るから」
カイトがニヤリと笑う。
「調子に乗ってるって、俺のどこが?」
「全部」
即答すると、カイトが俺の顎を掴んできた。
「まあいいや。お前のツンツンしてるところも可愛いしな」
「可愛いとか言うな」
そう言いながらも、内心では嫌な気はしない。むしろドキドキしてしまう。
「ほんと素直じゃないなあ」
カイトが俺の唇に軽くキスをして、離れていく。短いキスだったけど、心臓がドキドキする。
「おい、勝手にするなって」
「恋人なんだから当然だろ」
カイトの俺様っぷりにイラッとするけど、嫌いじゃない。
会社で、同僚に声をかけられる。
「陸、最近いいことあった?」
「まあ、普通かな」
「そう? なんか顔は嬉しそうだけど」
「……うるさい」
確かに最近は楽しい。カイトと一緒にいると、振り回されてばかりだけど退屈はしない。
夜、カイトの仕事が終わる時間に連絡する。
『お疲れ』
『陸から連絡とか珍しいじゃん。今すぐ会いに行く』
『別に来なくてもいいけど』
『遠慮すんなって。もう向かってる』
『勝手だな』
でも、内心では嬉しい。カイトが会いに来てくれるのが。
翌日の夜、カイトがいつもより早く俺のマンションにやってきた。
「今日早いじゃん」
「陸に会いたくて、適当に仕事切り上げた」
「適当って……大丈夫なのか?」
「全然。俺は売れっ子だからな」
自信満々に言うカイトを見てると、呆れるけど安心する。
「陸、映画でも見よう」
「何の映画?」
「俺が選ぶ」
「俺の意見は?」
「却下」
有無を言わさずソファーに座らされる。
カイトが勝手に選んだアクション映画が始まる。
途中で、カイトが俺を引き寄せて肩に手を回した。
「何してんの?」
「恋人らしいことしてるんだよ」
「恋人らしいって何だよ」
「こういうもんだろ」
腕で軽く固定されて、逃げづらい体勢になる。
映画が終わって、カイトが俺を見つめてる。
「陸」
「何?」
「俺のこと好きって言えよ」
突然命令口調で言われて、ムッとする。
「なんで命令するんだよ」
「お前が言わないからだろ」
「言う必要ないし」
「あるよ。恋人なんだから」
カイトが俺の頬にキスをしながら言う。
「……べつに、嫌いじゃないよ」
「嫌いじゃない、じゃなくて好きって言えって」
「うるさいな」
素直に言うのは恥ずかしい。でも、カイトの期待してる顔を見てると、言いたくなってくる。
「……好きだよ」
小さく呟くと、カイトがニッと笑った。
「よし。じゃあ今度は『愛してる』って言ってもらおうかな」
「調子乗るな」
カイトの俺様っぷりには相変わらず呆れるけど、そんなところも含めて、だんだん愛しくなってきている。
ともだちにシェアしよう!

