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第27話 初紹介、俺の緊張指数MAX

side 陸 翌朝、目が覚めると隣にカイトがいた。 いつの間にか俺のベッドで寝てるし、しかも俺を抱きしめてる。 「おはよう、陸」 カイトが先に起きていたらしく、俺の顔を覗き込んでいる。 「なんで俺のベッドにいるんだよ」 「ソファーで寝てるお前を運んだの。一緒に寝たかったし」 「勝手に……」 文句を言おうとしたけれど、昨夜のことを思い出して言葉が止まる。 「陸、今日会社休めない?」 「は? なんで?」 「妹に会わせたいから。今日、東京最後の日なんだ」 カイトが真剣な顔で言う。 「でも急に休むのは……」 「体調不良って言えばいいじゃん。風邪でもいいし」 「嘘はよくないだろ」 「じゃあ、『彼氏の妹に会うため』って正直に言う?」 それは絶対に無理だ。 「……わかったよ。午後から有給取る」 「うん、そうして」 カイトが嬉しそうに俺を抱きしめる。 「でも、なんで俺を紹介したいんだ?」 「だって、妹にずっと“お兄ちゃん、彼女できないの?”って言われてたから。今度は“恋人ができた”って報告したい」 「……そういうもんか?」 「そういうもんだよ。家族に紹介するって、特別なことなんだから」 カイトの言葉に、胸の奥が温かくなった。 本当に俺のことを大切に思ってくれているんだな。 * 午後、カイトと待ち合わせた場所に向かう。 緊張で手のひらに汗をかいている。家族に紹介されるなんて、人生初だ。 「陸、こっち!」 カイトが手を振っている。その隣には先日見た女の子がいた。 近くで見ると、確かにカイトに似ている。目元とか、笑い方とか。 「紹介するよ。俺の恋人の陸」 「初めまして! お兄ちゃんからよく話を聞いてます。私、妹の花音です」 花音さんは人懐っこい笑顔で俺に挨拶してくれる。 「あ、こちらこそ……陸です」 俺は小声でカイトに文句を言う。 「なんで最初から恋人って紹介するんだよ」 「だって事実じゃん」 「でも、いきなり言われると……」 恥ずかしくて顔が熱くなる。 「お兄ちゃん、陸さんすごく照れてる。可愛い」 「だろ? 俺の自慢の恋人なんだ」 カイトが嬉しそうに言う。ますます恥ずかしい。 「別に、自慢とかされても嬉しくない」 そう言いながらも、内心では悪い気はしていない。むしろ嬉しい。でも素直にそんなこと言えるわけない。 「陸さんって、普段どんなお仕事を?」 「えっと……事務の仕事を」 「真面目そう! お兄ちゃんとは正反対だね」 花音さんがくすくす笑う。 「おい、それどういう意味だよ」 「だって、お兄ちゃんって昔から自由人だったじゃん。でも陸さんは誠実そう」 「いや別に、誠実とか……普通だよ」 褒められると照れてしまって、つい素っ気なく答えてしまう。 カフェで三人で話していると、花音さんが突然真剣な顔になった。 「そうだ。お兄ちゃん、本当に今の仕事辞めないの?」 「……何の話?」 「ホストの話! お父さんとお母さん、心配してるよ」 カイトの表情が曇る。 「それは……」 「陸さんは知ってるの? お兄ちゃんの仕事のこと」 「あ、はい……知ってます」 俺は曖昧に答える。カイトの家族が彼の仕事を心配しているなんて知らなかった。 「お兄ちゃん、昔は普通の会社員になるって言ってたのに」 「人は変わるんだよ」 カイトが少し苛立ったような声で答える。 「でも……」 「花音、その話はもういい」 空気が重くなる。 「……別に、俺は気にしてないから」 ぽつりと口にする。 「陸?」 「カイトの仕事のことも、過去のことも。今は今だし、昔がどうだったとか関係ない」 そう言ってから、自分の言葉の恥ずかしさに気づく。 「……あ、いや、別に深い意味じゃねえよ、ただ、そういうもんだろ」 慌てて付け加えるけれど、カイトが嬉しそうに笑っていた。

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