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第3話 イヤミを言われまくってるんだが
マジでムカつく! この教諭、オレにしか聞こえないような声で言うときはいつも貴様呼ばわりなんだよな……!
「どうだねラットファム君。君ならばこの才能の欠片もない足手まといが一緒だとしても、運が良ければBランクの魔物くらいは倒せるだろう?」
オレにイヤミを言って気を良くしたらしいテラード教諭は、今度は最強魔法騎士様に絡み始めた。やっぱりさっき感じたとおり、テラード教諭にとっては最強魔法騎士様も気に食わない相手みたいだ。
「なんせ君は、代々この国の剣と名高い騎士の家系、ラットファム家の人間なのだから。それくらいできなくてはラットファムの名が泣くだろう? いや、そもそもが剣の才がなく魔法学校に入った時点で泣いているかな?」
うっわ、マジ最悪。最強魔法騎士にまでこんなイヤミな物言いなのか。
身長差が二十センチはありそうなのに、見上げながら見下してるし、自分の子供でもおかしくないくらい年が離れた生徒にこんなイヤミ言うなんて、ホント人間捨ててるわ。
そこまで考えて、ふと思い出した。
そういやぁテラード教諭って魔術師系の大家の出身だっけ。そりゃあ代々騎士団長を輩出してる騎士の家系なんてムカつく対象なのかも知れねぇな。しかもその子息が他を大きく引き離して万年トップなんて獲ってたら、妨害したくもなるワケか。
まったく、ショットグラスよりも器が小さいんじゃねぇか?
一方の最強魔法騎士様は、表情を変えることすらない。つまりは、こういうイヤミは言われなれてるってことだろう。なんでこの教諭、クビにならないわけ?
オレが心の中で首を傾げていたら、ようやく最強魔法騎士様が口を開いた。
「そうですね、確かに父からはBランクならば最低でも5体以上は狩ってくるようにと言われております」
あっさりと吐かれた言葉に、オレは仰天して目を剥いた。
は!? Bランク5体!? 今、Bランクって言ったか!??? しかも5体!?
それが最低ってどういうこと!? そんなの、たったの三日でどうしろってんだよ!
「おやおや、親御さんにも随分と嫌われたようだ。それでは卒業も危ういかも知れんなぁ。三日でその数を狩って帰ってくるなど、騎士団の一個師団でも出来まいに」
にやぁ、とますますテラード教諭の笑みが深くなる。しかしさすがは最強魔法騎士様、真顔でこう言い放った。
「精一杯努力するのみです」
うわぁ、テラード教諭があからさまに歯噛みしてる。
「……ふん。まぁいい、この落ちこぼれを庇っていては生きて帰るのも難しかろう」
最強魔法騎士様に口でダメージを与えるのは難しいと察したのか、テラード教諭はオレをギッと睨みつけた。うわ、またこっちに矛先が。
「巻き込まれて命を落とさぬと良いがなぁ貴様、せいぜい死なぬようにあがくことだ」
またもオレの顔をのぞき込んでせせら笑ってくるけど、確かに魔法も発動できねぇオレじゃ、Bランクがごろごろいるところで戦ったら瞬殺されること請け合いだ。
超速でBランク5体を狩ろうとしてる最強魔法騎士様に同行するなんて、マジで足手まといじゃねぇかよ……。ますます落ち込んできた。
「彼は死なせませんし、期限内に充分な魔物も狩ってくる予定ですから、ご心配なく」
凜とした声に顔を上げたら、自信に満ちた最強魔法騎士様のご尊顔が見える。
理不尽な言いがかりにも声を荒げない、落ち着いた態度ながら自らの主張はしっかりと発言する。実力に裏打ちされたその態度に、ちょっと感動してしまった。
「なっ……できもせんくせに大口を叩きおって」
「ハッタリですよ。できるものならやってみればいい」
「そうだそうだ!」
テラード教諭が悔しそうに言うと、ライエン様たちが追従するようにオレ達を睨んでくる。散々絡まれてなんかもう面倒くさい人たちだなぁと思ったところで、肩をポンと叩かれた。
最強魔法騎士様だった。
「行こう、実力を見せれば済むことだ」
それだけ言ってテラード教諭たちの横をすり抜けてスタスタ歩き始めるから、オレも慌てて後を追う。そしたら、誰かが追いかけてきて最強魔法騎士様へと話しかけた。
あ、この人。さっき言いがかりをつけてきた人たちの中のひとりだ。
ただ、この人だけはさっきからひと言も発せず、やれやれって顔で苦笑してたから、嫌々あの場にいたのかな、とは思ってた。もしかしたらあの中の誰かのパートナーだったのかも知れない。
「アクセラード、無理はするなよ。あいつら、お前のこと妨害する気満々だぞ」
……あ、最強魔法騎士様の友達なのか。
「分かっている。……ヒュー、お前の方こそ大丈夫なのか」
「あー、やりづらそうだねぇ。パートナーがライエン様だし」
うわ、最悪じゃん。最強魔法騎士様の友達なのに、あの集団とヘタすりゃまる三日も一緒に行動しないといけないなんて、その方がよっぽどイヤだわ。
「まぁでも僕含むあのあたりは成績上位者どうしでパートナーが組まれてるみたいだから、実力的には仕方ないって言うか。とにかくさっさと上級魔物を狩って終わらせたいかな」
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