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第13話 人間って不思議

【本文】 「ああ、俺もやり方までは知らなかった。古の魔法だと聞いていたんだが、こんなに簡単にできるものなんだな」 できるものなんだな、じゃないでしょうよ!!?? オレは恐怖した。アクセル様ほどになると、古の魔術と言われるような高等魔法でも自分で開発しちゃうのか。 「すごいっすね……」 思わず敬語になったら、アクセル様はちょっと目を見開いてオレを不思議そうに見る。 「すごいのはイールだろう。君が魔力を流してくれたから俺は受け取っただけだ。こんな風に誰かから魔力を身体に流し込まれるなんて初めての経験だ。誰にでも出来ることじゃない」 「いや、誰にでもできるでしょ。オレ、治癒しようと思っただけだし。……それに、魔石とか魔道具にも普通に魔力を送り込んだりするじゃん」 「治癒の魔力は身体の中まで入ってこない。そもそも通常は他人の魔力は反発してしまって身体の中には入っていかないものだというのが定説だ」 「そうなの?」 「君に特殊な力があるか、もしくは俺たちの魔力の相性がとんでもなく良かったかのどちらかだろう。ちなみに、魔石に魔力を送るような気持ちで、俺に魔力を送って貰ってもいいだろうか」 「う、うん……やってみる」 アクセル様が手を差し出すから、その手を両手で握って魔力を送ってみたら、ビクッ! と激しくアクセル様の体が揺れて、酷く焦った様子になった。 「すまん! は、離してくれ……!」 「え、あ、はい」 慌てて手を離したら、アクセル様はヨロっとよろめいて地面に片膝をつく。 「わ、大丈夫? イス! イスに座って!」 いったん離した手を再び握って何とかイスに座らせたら、アクセル様はなんとも色っぽい顔になっていた。 「す、すまん。一気に魔力が入ってきて、目眩が……」 ほっぺたが赤くなって、目がうるんでる。汗が噴き出して生え際の髪がちょっとしっとりしてる。握った手はぽかぽかとあったかいし、息だってはぁ……となんだかちょっと艶かしい。 なんかこう、全体的にエロい……! 表情が硬くて上背がデカいから怖そうな印象があるだけで、実はこの人、顔の造作はめちゃくちゃ綺麗なんだよな。 ちくしょう、気づきたくなかったこんなこと。 「ご、ごめん」 慌てて手を離す。見ちゃいけないものを見ちゃった気がして思わず謝ったら、アクセル様は火照った顔のまま微笑んでくれた。 「いや、俺が頼んだんだから、謝らないでくれ。多分だが、一気に魔力が上限値を超えるほど入ってきたことで、のぼせたようになったのだと思う」 【後書き】 皆様のおかげで3000ポイント突破しました……! 読んでくださってる方、評価やブックマークしてくれてる方、ありがとうございます……!!! 「のぼせた……?」 「ああ、体の中がかなり熱くて、動悸もすごいし汗がとめどなく出る。ちょうど熱い湯に浸りすぎてふらつく時のような感覚だ」 「ごめん、魔力を送りすぎたってことか。加減が分かんなくて」 「大丈夫だ、心配しなくてもじきに治るだろう」 そうかも知れないけど、色気ダダ漏れなアクセル様は正直目の毒だ。 イスに座ってるせいで色づいて汗ばんだうなじが見えてたり、悩ましげなため息が漏れ聞こえてくるのがいたたまれない。 ヤロウを色っぽいと思う日がくるとは思わなかった。綺麗な顔だけど俺より15cmくらいデカくて雰囲気もめっちゃ怖いのに。 人間って不思議。 とにかくこのアクセル様をずっと見てると新しい扉が開いちゃいそうで怖いから、とりあえずなんとかしたい。 うーん……と考えて、思いついた。 「あっ、そうだ。余った分の魔力をオレに戻せばいいんじゃないか?」 「……」 アクセル様は驚いた顔で俺を見て、自分の両手を眺めて、もう一度俺を見上げてきた。 「できるだろうか」 「やってみたら? 魔道具に魔力送ったりは普通にするんだろ?」 手を差し出したら、アクセル様が恐る恐るオレの手を握ってくる。その手はさっきよりもずっと温かくて汗ばんでいた。 「やってみる」 「どーぞ」 若干緊張してるっぽい表情で、アクセル様が目を閉じる。途端、握られた手から、あったかい何かが流れ込んできた。 「うわ……」 「どうだ?」 「変な感じ。でも確かになんか体の中に入ってきてる感じがする。これが魔力なのかな」 「魔力が増えた感じは?」 「わかんねぇ。さっきも別に減ったって思うほど注入してないし」 「……魔力量が豊富で羨ましい」 「へ!?」 まさか、オレがアクセル様から羨ましいと言われることがあるなんて。 「あ、でもアクセル様、顔の赤みが引いてきたかも」 「ああ、火照りが収まってきた感じがする」 汗も引いて、呼吸も落ち着いてきたっぽい。良かった、オレの平常心もこれで守られる。 「魔力の受け渡しはできるみたいだな。良かったじゃん、もしアクセル様が魔力切れしても、オレから補充できるし」 「いいのか?」 「うん。オレ、魔力量はとんでもなく多いらしいけど、使えねぇから宝の持ち腐れって感じなんだよな。使えるならむしろ嬉しいよ」 本心だった。いくら魔力があっても使えないなら意味がない。アクセル様くらい多彩な魔法を操れる人が使ってナンボだろう。オレの魔力でも使い道があってよかった。 そう思ったらなんかウキウキしてきた。

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