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第14話 ヘコんでるの可愛い

だって、アクセル様はA級の魔物を狩ることだって考えてるわけだろ? もしかしたらオレの魔力がアクセル様を救うことだってあるかもしれないじゃないか。 なんかそれって、落ちこぼれのオレでも間接的にでもちゃんと、アクセル様のパートナーとして役に立ててる感じがするじゃん! すっかり上機嫌になって、作りかけだった鍋に手早く芋だのニンジンだのをぶち込んでいく。 「アクセル様のケガも治ったし、野営の準備、再開しようぜ!」 「そうだった。あまり役に立てなかった……」 料理の準備で役に立てなかったくらいでヘコんでるの、可愛いくてちょっと笑う。 「そんなシュンとしなくても、また明日の朝チャレンジすればいいじゃん。これからいくらだってチャンスはあるんだし」 「そうか、そうだな。何事も鍛練か」 デッカい魔物を秒で屠るような人にジャガイモの皮むきを『鍛練』とか言われるとなんか微妙だけど、本人は大真面目だからなんかツッコめない。 「そうそう! そうだアクセル様、せっかくだから鍋作ってる間にもう一品作ろうか。次はボアの肉……バラがいいからこの肉かな。これを食いやすい大きさに切ってくれる? できれば薄めに」 「分かった」 アクセル様にバラ肉を切ってもらってる間にスパイス各種を取り出していく。 「ほんじゃちょっと味付けするよ」 「なんだそれは。……蜂蜜?」 「そう! ソイソースと酒と蜂蜜でちょっと甘辛く煮るとボア系の肉はめっちゃ美味いんだよね」 ソースを作っておいて、フライパンで薄く切ったニンニクとオリーブオイルを炒めて、食欲がそそられる匂いがしてきたところでアクセル様に切ってもらった肉を放り込む。 「あ、アクセル様。そこのキノコと香草、とってくれる?」 「これか」 「さっき採取したんだ。樹海ってこういうのが採取できるのはいいよね。新鮮で香りが高いからきっと美味しくできるよ」 「なるほど……食用になる植物も採取すればいいのか」 「うん。でもキノコや香草は毒性が強いのも結構あるから、そういうの見分けられるようになるまでは気軽に採取して口に入れるのは危ないかも」 「そうか。イールは詳しいのか?」 「うん、オレは孤児だからさ。ガキの頃からタダで食えるモンはなんでも食ったし。まぁそれで酷い目に遭ったこともあるけど」 「……!」 「今も採取の依頼をこなすことのほうが多いから、選定眼は磨かれたかもね」 アクセル様が気まずそうな顔をするけど、オレなんてラッキーな方だ。スカウトされて、本来なら結構な金がかかるはずの魔法学校に学費免除で入れて貰えた。 生活費は自分で稼がなきゃいけないけど、それでも魔法学校の生徒ってだけで寮に入れて貰えるし、ある程度の信用もできる。 冒険者登録するといいとか、それまでは飢えをしのぐために採ってたキノコだの草だのが、ちゃんと名前があって依頼を受ければ金になるもんだって知って……オレの世界は本当に変わったんだ。 スカウトしてくれたじいちゃん……魔法学校の校長には、本当に感謝してもしきれない。 本当はアクセル様みたいにすごい魔法使いになって恩を返したいけど、なかなかうまくいかないもんだ。 ちょっとだけ感傷に浸りたくなったけど、今はそんなことしてる場合じゃないもんな。 気を取り直して、オレはアクセル様に笑いかけた。 「肉とキノコと、ついでに切った野菜をぶちこんだら、さっき作ったソースを入れてこうやってフライパンで炒めるだけ。あ、炒めるっていうのはこんな感じで混ぜながら火を通すって意味ね」 「分かった。やってみてもいいか?」 「うんうん、いい感じ。炒めてるとさ、肉の色が変わって野菜やキノコがシナッとなるだろ?」 「本当だ……!」 目を輝かせて炒めてるの、ちょっと子供みたいで可愛いな。デッカいナリして素直なの、意外すぎる。オレはふきだしたくなるのを必死でこらえて、真面目な顔を心がける。 「これを火が通った、っていってこうなったら食えるんだ」 「なるほど……! イールは教え上手だな。教師になれるぞ」 「大げさだなぁ。で、火から下ろす直前で香草を入れてちょっとだけ炒めたら終了! 簡単だろ?」 「すごい……美味しそうな匂いだ……」 「だろー! あとは皿に移してっと……」 いったん役目を終えたフライパンで、アクセル様が炒めてくれてる間に作ったキノコの肉巻きを追加で作る。こっちは塩胡椒だけのシンプルな味付けだ。フライパンにソースが残ってるだろうからちょっと甘辛いかもだけど、それはそれで美味しいだろう。 「いつのまにかもう一品できている……!」 「へへー! お、鍋もできたみたいだ。食おうぜ!」 「ああ! 楽しみだ」 野宿にしてはそれなりに豪勢な食卓でうきうきする。ところがだ。思わぬ事態が起こった。 「え? アクセル様ってイスも持って来てないの? 今までどうしてたの?」 「焚き火の前に直に座っていたが」 「いちいちワイルドすぎない!? オレより数段高機能なマジックバッグ持ってるじゃん! 持ってこれるでしょ」 「その発想がなかった」 「ごはんくらいゆっくり食べたいじゃん……」

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