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第42話 魔力と魔石

アクセル様はしばらく考えたあと、気が付いたようにこう言った。 「もしかしたらそれも同じ理由かもしれないな。今は魔力が体中にパンパンに詰まっている状態だから、体の中の魔力が動くのが分からないのかもしれない」 「確かに」 「イールは一度、大量に魔力を吐き出してしまった方がいいのかもしれない。だが、俺がひきうけるにも限度があるし、その後に難があるからな……」 「それは危険だなぁ」 オレの魔力を貰いすぎてすぐにエロい顔になってしまうアクセル様を思い浮かべて、オレも素直にうなずいた。 でも、魔力の消費が激しい大魔法を使おうにもそんな魔法知らないしなぁ……それ以外に魔力を消費できるものっていったら……。 「あっ! オレ、高級魔石買ったんだった!」 アクセル様と一緒にシーサーペントを討伐したおかげで、オレの懐はかつてないくらいにホッカホカだ。 これなら高位魔法でも登録できる魔石が買えるかも! そう思ったオレは、この町で買える最高レベルの魔石を買ったんだ。 なんせ魔法はアクセル様が入れてくれるって言ってたし、魔石だけなら最高レベルを3つは買っても余裕がある。 とりあえずは最高級魔石を2つと大容量マジックバッグを買ったオレは今、自分史上最高にリッチなのだった。 そんなわけで、オレの魔力を大量に吸ってくれる魔石が今なら2つもある! オレは自分のバッグをごそごそとさぐり、目当ての魔石を取り出した。 「これ! これなら結構魔力を吸ってくれると思う!」 「随分と大きいな」 「最高級の魔石だから。魔力も大量に注入できるし、高位魔法も登録できるんだ」 「そうなのか。イールはまた魔石を買ったんだな」 「うん! アクセル様のおかげでお金が入ったし、これからアクセル様と一緒に旅をするなら強い魔物と戦うこともあるだろうと思ってさ。魔石に強力な魔法を込めておけば、いざという時に助かるかなと思って」 「そうか」 「これに魔力を入れてみる!」 いろいろあって魔力を淹れてなくて良かった。まだ最高級魔石に魔力を注入したことはないから、どれくらい吸収してくれるのかはわからないけど。 ぎゅっと石を握って、魔力を込めようとした時。 「あれ?」 オレは異変に気が付いた。 「どうした?」 「いや、いつもに比べてスルッと魔力が出てく……あ、いや、やっぱ普通か」 「ちょっと待ってくれ」 急に真剣な表情になったアクセル様が、再びオレの手をぎゅっと握る。 「あ……」 さっきと違っていっきに肘くらいまでアクセル様の魔力が入ってきた感触があってびっくりした。 「すごいな」 「え? なにが?」 「さっき、イールの体の中の魔力があまりにも凝縮しているようだったから、ちょっとかき混ぜてみたんだが、その分だけ一気に魔力が放出されたようだ」 「何やってんの!!???」 だからあんなにうにょうにょ動いてる感じがしたのか! しかしまぁ、他人の体の中の魔力をかき混ぜて動かしやすくしようだなんて、アクセル様ときたらとんでもないこと考えるなぁ。 「やっぱり粘度が弱いほうが魔力の放出にも向くようだ。イール、ちょっと頼みがあるんだが」 「う……今度はなんだよ」 「魔力の流れを確認したい。気持ち悪いかもしれないが、我慢できる程度なのであれば、もう一度さっきのように俺の魔力を入れて調整させてくれないか?」 「またオレの中の魔力をかき混ぜるってこと?」 「そうだ。魔力を放出しやすくなるだけでなく、うまくいけば魔力の循環を改善できるようになると思う」 「うう~……」 気持ち悪いけど、でも、アクセル様が本気でオレのことを考えて言ってくれてるって分かるから。 「分かった……よろしく、お願いします」 「ありがとう、イール」 お礼を言うのはこっちの方なのに、アクセル様はそう言って微笑んでくれる。 「そうだ、イール。俺の上に腰かけてくれないか?」 「は!!???」 アクセル様が突然とんでもないことを言い出すもんだから、オレは目をむいた。 「あ、その、変な事を言って済まない。だが体を密着させた方が、イールの体の中を巡る魔力を感じ取りやすいと思ったんだ」 「あ、なるほど、そういう事……」 うう、でも恥ずかしいな。 「そう赤くなられるとこっちも照れるんだが」 「しょうがないだろ。アクセル様のこと好きなんだから、意識するなって方が無理だし」 「向かい合わせよりは照れないと思ったんだが」 「それはまぁ、確かにそうなんだけど」 半信半疑で身を預けてみてびっくりした。つないだ手から入ってくる魔力はさっきよりも格段に多くて、躊躇なく中に中に入ってくる。 ところがだ、肘から先は急にその勢いが止まって、またさっきみたいに魔力がうにょうにょと動きだす。 もしかして、肘くらいまではさっきアクセル様が魔力をかき混ぜてくれてたから魔力が通りやすくなっていて、その先のまだ凝縮している部分を今まさにアクセル様が混ぜ混ぜしてくれてるってことなんだろうか。 「イール、魔石に魔力を送ってみてくれるか?」 アクセル様に言われるままに、魔石に魔力を送った途端。 「おお……!!!」

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