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第44話 泉のような魔力

「大丈夫か? 魔力切れしているのかも……」 「んー……まだまだ魔力はあるっぽいから魔力切れって感じじゃないけど……今まで充満してた魔力がだいぶ少なくなったから、なんか体の中がスカスカしてる感じがある」 「ほう、そんなことがあるのか」 「オレも初めての感覚だけど……でも、ちょっと慣れてきたかな。なんかじわじわ魔力が増えてる気がするし」 「眠っているわけでもないのに自分で分かるほど魔力が増えているのか!?」 「多分。今まで魔力が増えたり減ったりするのも分んなかったから、多分、ってしか言えないけど」 「すごいな。イールの場合は泉のようにこんこんと魔力が湧き出ているのかもしれない。本当に羨ましいよ」 「……!」 まさか、アクセル様に羨ましいと言われる事があるなんて。 「イール、魔力が感じ取れるようになったのなら、魔法も使えるようになるかもしれないぞ」 「えっ!!! 本当に!?」 「やってみなければわからないが、かなり可能性は高いと思う。イール、俺が教える。一緒に頑張ってみないか?」 「いいのか!? 嬉しい……オレ、頑張るから、よろしくお願いします!」 オレがそう言ったら、アクセル様はなんだかすごく嬉しそうに笑った。 「もちろんだ。俺は魔法を教える。イールは生きる術を教える。お互いに提供できることがあってよかった。イールにばかり教えを乞うのは申し訳ないと思っていたんだ」 本当はオレなんて、アクセル様とパーティー組めるような実力じゃないってのに、アクセル様は本気でオレに申し訳ないと思っているらしい。 「オレが教えられることなんて、誰でも教えられることなんだけどな」 「そんなことはない。誰も教えてくれなかった」 それは多分、とんでもない実力を誇るアクセル様が、まさか野営のいろはを知らないなんて思ってなかったってだけだと思うけど。 そう冷静に考えるオレをアクセル様は後ろからキュ、と軽く抱きしめて、オレの肩にをそっと顎を乗せてきた。 「……誰かが教えてくれるとしても、教えを乞うなら俺はイールがいい」 耳元でささやかれて、オレはひそかに赤くなった。 「好きだ、イール。可愛くて、頼もしくて、興味深い。イールのパートナーになれて嬉しい」 耳朶をうつ声は穏やかで柔らかいのに、背中に感じるアクセル様の鼓動がバクバクと早くて、オレまでどきどきと心臓が早鐘を打つ。 「……っ」 アクセル様にぎゅ、とさらに強く抱きしめられて、全身が熱を持った。 恥ずかしくて、幸せで。 「そんなの、オレの方が百倍そう思ってるよ。アクセル様がオレなんかをパートナーに選んでくれて、本当に嬉しいんだ。……その、これからも、ずっと一緒に、居られるし」 目をぎゅうっと瞑って、オレはなんとかそう言葉にした。 「イール……!」 「こういうの言葉にするの、恥ずかしいな。なんでアクセル様、そんな素の顔で言えるんだよ……!」 「俺も照れがないわけではないが、イールにオレの正直な気持ちを分かって貰うほうが大事だからな」 アクセル様の潔さに、オレは言葉を失った。 オレなんて、本心をそのまま言うのってなんでこんなに怖いんだろって震えてたのに。 「それにイールをみたら勝手に言葉がでる。好きだ。可愛い。いい匂い」 「なっ! 何言ってんの!!???」 「ああ、イールの心臓も、俺と同じくらい高鳴っているのが分かる。嬉しい」 「!!!」 そう言われると、急にオレをぎゅっと抱きしめてるアクセル様の腕までもが恥ずかしくなってくる。 いたたまれなくてちょっとモジ、と身を捩ったら、逆にぎゅっと抱きしめられた。 「離れないで欲しい」 「~~~~っっっ」 耳元でそっと囁かれて、オレは恥ずかしくて顔が熱くて、もう全身が爆発するかと思った。 「触ってもいいか?」 いや、もう全力で触ってるじゃん! オレ、アクセル様の膝に座ってるわけだし、その状態でぎゅうぎゅうに抱きしめられてるんだから、ほぼほぼ全身触ってるじゃん! 今さらすぎる、と思いながら高速で首を縦に振ったら、思いがけない衝撃が来た。 「ふわっ!?」 さわ、とアクセル様の手が動いて、オレの胸を撫でる。 「あああああアクセル様!!???」 「不思議だな。今までこんなこと思ったこともなかったのに、イールの全身に触れてみたくてたまらない」 そそそそそっちの意味!? 混乱するオレに気づくことなく、アクセル様の手がオレの身体をそっとなぞるように動いていく。 あっ、ちょ、ちょっと待って……! 「アクセル様……っ」 止めようと思って口を開いた瞬間、体がくるんと回されて、唇が塞がれた。 「ん……っ」 じゅうっと唇を吸われて、あまりのことに体の中に雷が走ったみたいな衝撃が走る。 そのまま唇を舐められて体を震わせているうちに、吸われて、唇を揉むように嬲られて、分厚い舌が押し入ってきて……口の中をあますことなく蹂躙されているうちに、気が付いたらベッドでアクセル様を見上げていた。 「アクセル、様……」 初めての口づけが熱烈すぎて、頭がぼんやりしてしまう。

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