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第9話 やさしさの定位置

それから土曜日は、昼ごはんを一緒に食べて高村の部屋に行き、午後はのんびり「甘やかす&甘える」時間を過ごすのが定番になっていた。 ソファで並んで座りながら、日比野がぼやく。 「今週、結構忙しかったよなぁ」 「そうだね。小さいミスも重なっちゃったし」 高村が眉を下げて微笑む。 「そうなんだよー!なんでミスって重なるんだろうな? 時間なくて結構残業した…」 「お疲れさま。…俺は今日を楽しみに仕事頑張ってた」 さらりと言う高村を見て、日比野は思わず顔を赤くした。 「…ん…俺も…。今週終わったら、いっぱい甘えるぞ!って思って仕事してた…」 もじもじしながらも、素直な気持ちを伝えられるようになっている。最初よりもずっと自然に。 高村は目を細めて微笑む。 「いっぱい甘えていいよ」 少し考えて、日比野は高村の肩に頭を預けた。目をぎゅっと閉じ、口元はきゅっと結ばれている。勇気を出して自分から甘えにきた様子に、高村はくすりと笑った。 「…いいね。すごく。可愛い」 そう言って、高村は自分の頭を日比野の頭に寄せ、片腕を回す。髪に指をすっと差し入れて、梳くように撫でた。 心地よさに、日比野の強張りは少しずつ解けていく。 「…髪触られるの、嫌じゃない?」 「…嫌じゃない。むしろ好き」 小さな声の素直な答えに、高村は静かに微笑んだ。 このひとときが、二人にとってかけがえのない癒しになりつつあった。

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