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第14話 会いたい日曜日

日曜の午前中、日比野のスマホがメッセージを受信する。 高村からで、急いで開けると 『今日は忙しい?予定がなければ少しだけでも会いたいな』 と書いてある。 自分の寂しさを見透かされているみたいでドキリとしつつ、高村に会いたい気持ちで自然と頬が緩んだ。 『空いてる。一緒に昼食べる?』 と送って、出かける準備を急いでし始めた。 ⸻ 「結婚式、どうだった?」 「んー、まぁ、幸せそうだったよ」 定食屋さんでご飯を食べながら、昨日の話をする。 「また声かけられまくってた?」 日比野がニヤリとしながら冗談ぽく聞く。 高村は片眉を少し上げて日比野をチラリと見た。 「…なんかね、疲れた」 その一言だけで高村の昨日の様子がなんとなくわかって、日比野は少し吹き出す。 「ぷっ…おつかれさま…くく」 「笑うなよ。…今日はもう帰ろうかな…」 「あー待って、それは困る」 そんな軽口を叩きながら、ご飯を食べ終える。 高村の部屋につくと、高村がソファに座って、手すり側に背中を預けて足をもう片方の手すりに伸ばすように座っていた。 要するにソファを一人で占領していて、日比野は座れない。 「…なんだよ。意地悪すんなよ…」 ぶう、と頬を膨らませて高村を見る。 「意地悪してない。ここに座って」 足の間を指差して言う。 遠慮なく足を跨いで間に座る日比野に、高村は微笑む。 「もっと寄りかかっていいよ。寝る感じで」 高村の胸にもたれかかると、本当に二人でソファで眠るような形になって、少し恥ずかしくなる。 「…重くない?」 「全然。落ち着く」 高村の片手が日比野の前に回る。 日比野は目を瞑って、心地よいあたたかさに身を任せた。 高村は日比野の頭を撫でながら、 「日比野は?昨日なにしてたの?」 と聞いてきた。 日比野は少し考えてから、 「本読んだり…なにもしてないよ。ぼーっとしてた」 と答える。 「そう…寂しかった?」 冗談めかした口調だったのに、日比野は思わず真面目に、 「寂しかったな…」 と口にしてしまい、ハッとした。 「あ!いや、これは…」 慌てて顔を上げると、高村は嬉しそうにニヤニヤと笑っていた。 「そうなんだ。それはいいこと聞いた」 「…お前だって、連絡してきたってことは、寂しかったんだろ?」 鼻息をふんふんさせて誤魔化すように聞いてくる日比野に、高村は小さく笑って頷いた。 「そう。俺も寂しかった」 素直に答えられて、日比野は言葉を失う。 高村の指が髪から耳の後ろをゆっくり撫でると、日比野はくすぐったさに小さく身を揺らした。その小さな動きに高村は微笑む。 「甘やかしたくて、我慢できなくて連絡しちゃったな」 日比野はすっかり高村に身を預けながら答えた。 「…嬉しかったよ、連絡。…もしかしたら女の子といい感じになってたりするかな、とか…ちょっと考えてたし…」 「はは、そんなこと考えてたんだ?可愛いね」 耳の後ろあたりの髪を撫でている時に、髪に隠れている小さなホクロを見つけて、高村は目を細めた。 日比野が口を開く。 「ない話ではない、だろ?」 「…まあね」 高村は、あの場で本当は日比野のことばかり考えていたとは言わずにおいた。 自分の気持ちが、日比野のそれよりも少しラインを超えているような、そんな気がして、日比野をやさしく抱きしめて誤魔化す。 日比野も素直に抱きしめ返し、あたたかい胸に顔を埋めて、頬を緩ませた。 そのままうとうとして、気づけばもう夕方。 「明日仕事だから帰る」 日比野が慌てて玄関に向かうと、高村が少し残念そうに、 「俺は泊まってもいいけど」 と呟いた。 「お前のスーツじゃ大きくて借りられないし!朝起きてから家に帰るの面倒だもん」 と笑って返すと、高村は真顔で、 「…じゃあ今度スーツとシャツ持っておいでよ。俺んちに置いておけばいい」 と言ってくる。 本気なのか冗談なのか分からず、日比野は曖昧に、 「……検討しとく」 と答えて部屋を出た。 どこまでも甘やかされすぎて、思わず頬が緩む。 誰にも見られないように、そっとその笑みを隠して帰路についた。

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