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*第79話 落ち着かない、の正体
思っていたより身体はそんなに辛くはなくて、「大丈夫」と言っているのに、それでも「心配だからダメ」と言われて、今日は1日家で過ごすことになった。
遅めのブランチを食べて、ソファでのんびりと映画を見る。
寄り添うように二人はくっついて座っていた。
高村は日比野の肩のほうへ伸ばした腕をソファの縁に置いている。
日比野は、高村の肩に顔を寄せた。
当たり前のように、高村の手がそんな日比野の髪を撫でる。
穏やかでゆったりとした時間が流れていた。
「……なんか」
日比野がぽつりと口を開いたので、高村は顔を横に向けた。
「ん?」
「…前から、こうしてさ、映画見てたじゃん」
甘えるだけだったあの頃から、変わらず過ごしてきた時間。
「そうだね」
「甘えるのが癒されるのも、横にいるのが落ち着くのも、変わらない…んだけど」
「…だけど?」
日比野が少しだけ頬を染めて困ったように高村を見る。
「…落ち着かないのも、増えた」
「え?どっち?…落ち着かなくなったの?」
高村が少し眉を下げて苦笑する。
「だって…触られるとドキドキするし…そわそわするし、ゾワゾワもするし…」
顔を赤くしつつ高村をチラリと見る日比野の表情に、高村はぐ、と息を詰まらせる。
(…なんでそんなに可愛いんだよ…)
可愛い可愛いと伝えるとうるさがられるので、一呼吸ついてから高村は口を開いた。
「…ゾワゾワっていうのは、嫌な感じのほうじゃないよね?」
「違うよ。そんなわけないだろ…」
「じゃあ、『感じてる』のほう?」
ストレートに聞いてみると、日比野はさらに頬を赤くして俯いた。
「……わかんないけど、そう、なのかな…」
昨夜の日比野の様子からみて、どうやらかなり感度が高いのは確かだ。元からなのか、受け入れる側になってみて初めて現れたものなのか。多分後者なのだろう。
昨日の余韻も相まって、身体全体が敏感になっているのかもしれない。
高村はそっと日比野の頬に触れる。
ぴく、と揺れて高村のほうに顔をあげた目と目が合う。
「もししたくなったら、いつでも遠慮なく言ってね、昨日みたいに」
「…」
「昨日の今日だから、最後まではしないけど」
受け入れる側の負担を考えると当然だ。
可愛い恋人の姿に、する側はいつでも臨戦態勢になってしまいそうだけれど。それについては黙っていた。
日比野は、高村の顔をじっと見た後、少し視線を逸らして
「……うん…ありがと…」
と答えた。
その様子を見ていた高村は、頬に添えていた指をするり、と日比野の顎と首のラインに滑らせて、顔を近づける。
ふるりと震える日比野の耳に口元を近づけて、やさしく聞いた。
「…あんなにしたのに、また欲しいの?」
「!!……っ、言ってない、そんなこと…」
「そう?じゃあ俺の勘違いかな」
「……そう、だよ…」
頬を膨らませている日比野の頭を撫でて、その時はそのまま終わった。
でも結局、夜に
「…やっぱり…、したい、かも…」
と頬を染めながら言われて、高村は頭の中で白旗を振った。
(いや無理…こんな可愛くてその上積極的とか…俺の理性が勝てるわけない…)
それでも——
「…身体、つらくなったら、すぐ言って…」
そう言い聞かせるように呟いて、
高村は日比野の頬に触れた。
その指先に、ぴくりと小さく反応する。
「……ん…」
かすれた声と一緒に、
日比野が少しだけ身を寄せてくる。
その仕草だけで、理性がぐらつく。
(……ほんと、無理だって)
内心でぼやきながらも、
高村は一度だけ深く息をついた。
急がないように。
無理をさせないように。
自分に何度も言い聞かせながら、
ゆっくりと距離を縮めていく。
抑えきれない熱に押されるようにして、
日比野の身体を抱きしめる。
一度だけ、日比野の様子を確かめるように視線を落とす。
「……大丈夫?」
小さく頷くのを見てから、
そのまま、静かに繋がった。
——そして。
全部が終わったあと。
腕の中でくったりしている日比野を見下ろして、
高村は静かに息をはいた。
(……一回で止めた俺、偉すぎる…)
誰に言うでもない心の中で、
盛大に自分を褒めた。
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