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第11話
暗闇の中で、ぱかりと緋色の目がひらいた。ぼんやりと焦点を結ばない瞳は、数度瞬きを繰り返すとゆるりと光を宿した。
むくりと身体を起こし、銀糸の頭をきょろきょろさせ周囲を見渡す。
寝起きのぼんやりとしたせいか、頭が働かない。柳眉に刻んだ眉間のシワが、不機嫌そうに濃くなる。剣呑に緋色の目が眇められると、寝起きであってさえ透き通るような美しさと相まって、冴えたるように凄みが増す。
ガシガシと光り輝くような銀糸を無造作にかき、寝台から降りる。暗がりに慣れた目は周囲を見るのに困らないが、観察するには不向きだった。
緋桐はふわふわとした意識のまま扉まで歩き、壁伝いに何かを探すような素振りを見せた。さわさわと白い腕が壁を這い、何かに気付いたようにぴたりと止まる。壁に這った自身の腕を見て、視線が部屋へと戻る。ぐるりと一望して、寝台の横に置かれた香炉に目を留めた。むーっとさらに柳眉を険しくさせ、緋桐は寝台まで戻り、側にあった液体の入った小瓶をつかんで香炉に数滴垂らした。
ふわりと一瞬何かの香りがして、次の瞬間ふわぁっと部屋が明るくなる。
緋桐は明るくなった室内を改めて見渡し、少し前自身が湯を浴びた浴室まで覗く。
誰もいないのだと理解すると、彼は上着を引っ掛け外へと飛び出した。
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